頭をすっきりさせたい。記憶力をどうにか向上させたい。
そんなふうに願うことは、ごく自然な感情です。
ドラッグストアの棚やインターネットのページを眺めてみると、認知機能の助けになるという健康食品、特に天然由来のサプリメントがずらりと並んでいます。
時には外来の患者さんが「このサプリメントを飲もうかと思うのですが、効きますか?」と私に尋ねることがあります。
そういうとき、私は曖昧に笑ってうなずくことしかできないのです。
果たして本当に効果があるのかどうか、正直なところよくわからないからです。
科学というのは、ある種の網のようなものです。
世界中で行われた数多くの研究を網でひとまとめにし、ゆっくりと揺すってふるいにかける。
その一つの方法が「ネットワークメタアナリシス」という手法です。
2025年のある研究では、この方法を用いて、健康な成人2,334人が参加した27の研究を注意深く調べました。
19種類の天然抽出物がプラセボ(偽薬)に対して、どれほど認知機能を改善するかが比較されました。
結果は興味深いものでした。
特に、記憶力、計画を立て実行する力、物事を柔軟に切り替える能力に最も効果的だったのは「肉蓯蓉(ニクジュヨウ、別名を『カンカ』とも呼ばれます)とイチョウ葉の組み合わせ(CG)」でした。
研究で使われた適切な用量は、肉蓯蓉が1日300 mg、イチョウ葉が120 mgでした。
一方、全般的な認知機能については、「イトヒメハギの根(RPTW)」が比較的良い結果を示しています。
しかし、集中力の向上に関しては特筆すべき効果を示した抽出物はありませんでした。
注意力を一定に保つというのは、植物の力だけではなかなか難しいようです。
研究者たちはこれらの結果をあくまで一歩目だと捉えています。
今後はさらに長期にわたる影響や、さまざまな年齢層への影響を詳しく見ていく必要があると言っています。
この際、はっきりと言ってしまいますが、飲んだ途端にすべてが解決するような魔法の薬は、きっとどこにもありません。
それでも研究者たちは諦めずに、今日もまた小さな実験室や小さな書斎の中で新しい発見を積み重ねています。
そうした営みを通じて、私たちは少しずつ脳の複雑な地図を手に入れ、自分自身をより深く知り、そしてほんの少し賢く暮らしていけるのかもしれませんね。
参考文献:
Wang ZY, Deng YL, Zhou TY, Liu Y, Cao Y. Effects of natural extracts in cognitive function of healthy adults: a systematic review and network meta-analysis. Front Pharmacol. 2025;16:1573034. Published 2025 Mar 27. doi:10.3389/fphar.2025.1573034

紹介した論文の音声概要を、NotebookLMでポッドキャスト化してみました。あわせてお楽しみください。