仕事の悩みが伝わる? 愛犬とあなたの心の糸

仕事の悩みが伝わる? 愛犬とあなたの心の糸

 

飼い主の帰宅を喜ぶ犬の動画を見かけることがあります。

実際に犬を飼っていない私たちでさえも、自然と笑みがこぼれてしまう微笑ましいシーンです。

そんな無邪気な犬の姿に、多くの人が日々癒やされていることでしょう。

しかし、最近のアメリカの研究で、飼い主が感じる職場のストレスが、知らず知らずのうちに愛犬にまで影響を与えている可能性が示されました。

 

バージニア工科大学の研究チームは、働く犬の飼い主85人とその犬を対象に調査を行いました。

調査では、飼い主の仕事上のストレスの程度と、「仕事関連反芻思考」(職場の悩みを繰り返し考え続ける癖)の有無を尋ねました。

また犬のストレスは、飼い主自身の認識と、具体的な行動(鼻舐めや震え、あくびなど)という二つの指標で測定しました。

家庭内のストレス要因は慎重に除外されています。

 

調査結果は明確でした。

職場でのストレスが強い飼い主ほど、その犬にもストレス行動が頻繁に見られました。

さらに、この影響が「仕事関連反芻思考」を介して伝わっているということが分かったのです。

飼い主が仕事のことで頭がいっぱいになると、犬への接し方が無意識のうちに変わったり、飼い主自身の微妙な緊張が犬に伝わったりするのです。

犬は私たちが思っている以上に繊細で、人の気持ちや空気感を鋭く感じ取っているのでしょう。

 

一方で、多くの飼い主が犬のストレスを正確には認識できていないという点も注目されました。

犬を家族として大切に感じているからこそ、微かなストレスの兆候を見逃してしまうこともあるのかもしれません。

 

この研究は、職場のストレスを家庭に持ち帰ることが愛犬にも影響を与える、という見逃せない事実を示しています。

「自分のペットにまで気を使わなきゃならないのか!」と思うかもしれませんが、実際には大袈裟なことをする必要はありません。

玄関に入る前に深呼吸をしたり、スマホを少し置いて愛犬との時間をゆったり楽しむなど、ちょっとした気持ちの切り替えが、自分自身の心の健康にも繋がるでしょう。

犬を飼っている方もそうでない方も、仕事のストレスを上手に切り替える習慣は大切だということですね。

 

参考文献:

Mitropoulos T, Andrukonis A. Dog owners’ job stress crosses over to their pet dogs via work-related rumination. Sci Rep. 2025;15(1):16887. Published 2025 May 15. doi:10.1038/s41598-025-01131-x

 

 

紹介した論文の音声概要を、NotebookLMでポッドキャスト化してみました。あわせてお楽しみください。