人間関係というものは、いつもややこしくて、やれやれと思わされることがしばしばです。
例えば、AさんとBさんは親友だけれど、BさんはなぜかCさんをひどく嫌っています。
その一方で、CさんとAさんは顔を合わせれば、穏やかな微笑みを浮かべて挨拶を交わす程度には仲が良い。
何だか不思議な人間模様がそこに浮かび上がっているような気がしてきます。
こうした人々のつながりを、社会科学の世界では「人間関係ネットワーク」と呼ぶそうです。
その中で「バランス理論」という興味深い考え方があります。
簡単に言えば、「友達の友達はやっぱり友達であるべきだし、敵の敵もまた友達になってもいいじゃないか」という、まあ、人間らしい理論なわけです。
これまで、人間関係のバランスを測るために、「ヌルモデル」と呼ばれる方法が使われてきました。
これは簡単に言えば、実際にある人間関係が偶然の結果なのか、それとも何か特別な意味を持つものなのかを判断するために、「適当にシャッフルした人間関係の図」と比較する方法です。
でもどうも、このシャッフルの仕方には、いろいろと問題があったようです。
ある人が極端に友好的だったり敵対的だったりする個性や、そもそも誰と誰が知り合いなのかという情報がきちんと反映されないことがあったのです。
そんなわけで、ノースウェスタン大学の研究者が「STPモデル」という新しい方法を提案しました。
このモデルでは、関係の骨組みとそれぞれの人の性格をそのままに、関係性の「好き」と「嫌い」だけを巧みに入れ替えていきます。
私としては、どことなくジャズの即興演奏を思わせる方法のように感じられます。
研究者たちはこの新しい方法を使って、技術系のニュースサイトやアメリカ議会議員の関係、ビットコイン取引に関する人間関係など、実際の社会のネットワークを調べました。
すると、これまでの方法では見えなかった「強いバランス」が、小さな集団の中で一貫して現れました。
具体的には、全員が気の合う友達か、あるいは一組だけが友達で残りは敵対しているものの、その敵同士もまた仲が良いという、安定した関係性です。
この研究から、人間関係という複雑な世界をきちんと理解するためには、適切な視点と方法が必要だと分かりました。
うまくやれば、複雑に見える関係も意外なほどシンプルで、どこか美しい法則が隠れていることに気づかされるかも知れません。
人間関係とは案外そういうものかもしれませんね。法則を見つけたって、まったく簡単じゃないですけど。
参考文献:
Hao B, Kovács IA. Proper network randomization is key to assessing social balance. Sci Adv. 2024;10(18):eadj0104. doi:10.1126/sciadv.adj0104

紹介した論文の音声概要を、NotebookLMでポッドキャスト化してみました。あわせてお楽しみください。
