野菜や果物のジュースが体に良いというのは、当然のように信じているところがあります。
朝、慌ただしくキッチンに立ち、忙しい一日の始まりにさっとビタミンを摂る。
それはとても「オシャレ」で魅力的な時間のように感じられます。
近ごろは特に「ジュース・クレンズ(ジュースによるデトックス)」などと言って、数日間ジュースだけで体をリセットする方法が流行っているようです。
でも、本当にそれは「素敵なこと」ばかりでしょうか。
実は最近、なかなか興味深い研究が発表されました。
その研究には、14人の若い健康な人が参加し、3つの食事パターンを試しました。
(1) ジュースだけを飲むグループ
(2) ジュースに普通の食事を合わせるグループ
(3) 植物性食品中心の食事をするグループ
3日間、それぞれの食生活を送り、その前後で口の中と腸内の微生物(マイクロバイオーム)を調べたのです。
結果はちょっと予想外でした。
特にジュースだけの食事は、口の中の微生物のバランスを明確に変えてしまったのです。
糖分が多く繊維が少ないことが原因で、炎症を起こしやすいプロテオバクテリアという細菌が増え、健康に良い働きをするフィルミクテスが減りました。
プロテオバクテリアの増加は、口内炎や歯周病につながることがあると言われています。
腸の方でも、認知機能やストレスに影響する微生物が少し増える傾向が見られましたが、3日間という短い期間では、腸内の変化はそれほど大きくありませんでした。
一方、ジュースを摂らない植物性食品中心の食事をしたグループでは、腸内で炎症を抑える短鎖脂肪酸を作る善玉菌(フェカリバクテリウム・プラウスニッツィという難しい名前の菌など)が増えました。
これらの菌は免疫を強化し、私たちの健康に静かに、でも確実に貢献しています。
もちろん、ジュースが絶対に悪者というわけではありません。
普段野菜や果物を食べない人でも、簡単にビタミンを摂れる良さがあります。
ただ、繊維を取り除いたジュースばかりを飲むのは、ちょっとした注意が必要というわけです。
研究者たちは、ジュースだけの生活は短い期間でもマイクロバイオームに悪影響を及ぼすかもしれない、と注意を呼びかけています。
ジュースを飲むなら繊維も一緒に摂れるスムージーにしてみたり、普段の食事にもっと野菜を取り入れたりするなどの工夫が大切です。
体内の小さな微生物たちが、私たちの健康を左右しているなんて、考えてみると不思議ですよね。
ジュースを飲みながらふと、そんなことをぼんやり考えてみる―それは案外、悪くない時間かもしれません。
参考文献:
Sardaro MLS, Grote V, Baik J, Atallah M, Amato KR, Ring M. Effects of Vegetable and Fruit Juicing on Gut and Oral Microbiome Composition. Nutrients. 2025;17(3):458. Published 2025 Jan 27. doi:10.3390/nu17030458

紹介した論文の音声概要を、NotebookLMでポッドキャスト化してみました。あわせてお楽しみください。