コーヒーを飲む人は世界中にあふれています。
毎朝のコーヒーがないと頭が目覚めない、という人も少なくないでしょう。そういう私もコーヒー依存を自称しています。
では、実際にコーヒーに含まれるカフェインが私たちを目覚めさせるのでしょうか、それとも「コーヒーを飲めば目が覚める」という思い込みによる効果なのでしょうか。
ちょっと興味深い研究をご紹介しましょう。
研究チームは普段からコーヒーをよく飲む大学生20人を対象に小規模な実験を行いました。
参加者には通常のコーヒーに見せかけたカフェイン入りの飲み物か、カフェインが入っていない(でも味は同じ)飲み物を飲んでもらいました。
誰も自分がどちらを飲んでいるか分からないようにした上で、脳波や血圧、心拍数、そして計算問題を解いたり、音に反応してボタンを押すなどのテストを行ったのです。
結果はちょっと意外なものでした。
カフェインが入っていてもいなくても、参加者の血圧は上がり、心拍数は下がりました。
計算問題の能力にも大きな差はありませんでしたが、音への反応速度はカフェイン入りの飲み物を飲んだ人の方がわずかに速くなりました。
具体的には平均で約21ミリ秒(0.021秒)短縮されましたが、実はカフェインが入っていない方でもほぼ同じくらい短縮されてしまったのです。
面白いのは脳波の変化でした。
カフェイン入りを飲んだ人は脳の特定の部分(前頭部)のアルファ波が少し減少しました。
アルファ波は脳がリラックスしているときに増える波なので、これが減ったということは、脳が「今すぐ動く準備をしている」とも言えるのです。
一方、カフェインなしの飲み物でも脳波に似たような変化は見られましたが、その程度はやや小さかったようです。
つまり、コーヒーには確かにカフェインによる目覚めの効果がありますが、それだけでなく、「コーヒーを飲む」という行動そのものやその香りや味、習慣としての「儀式的要素」が脳や身体を目覚めさせる働きを持っている可能性が高い、というわけです。
例えば、朝決まった時間に新聞を読む、あるいは特定の音楽を聴くと気持ちが落ち着いたり集中力が高まったりするのと似たような仕組みかもしれません。
この研究から私たちが得られるメッセージは静かなもので、特に劇的ではありません。
でも考えてみてください。
日常生活の小さな習慣やその意味をあらためて見つめ直すことが、思った以上に私たちの心身の健康に影響しているかもしれない、ということです。
今日のコーヒーの一杯は、ただのカフェイン補給以上の役割を果たしているのかもしれません。
そして、それはコーヒー以外の様々な習慣にも言えることなのかもしれませんね。
参考文献:
Lesar M, Sajovic J, Novaković D, et al. The complexity of caffeine’s effects on regular coffee consumers. Heliyon. 2025;11(2):e41471. Published 2025 Jan 9. doi:10.1016/j.heliyon.2024.e41471

紹介した論文の音声概要を、NotebookLMでポッドキャスト化してみました。あわせてお楽しみください。