紹介した論文の音声概要を、NotebookLMでポッドキャスト化してみました。あわせてお楽しみください。
「あと5分だけ…」と、つぶやきながらアラームを止めてスヌーズボタンを押す。
私自身にも心当たりがありますし、おそらくどなたにも経験があることでしょう。
朝のひととき、寝床の安らぎから抜け出すための、ちょっとした儀式のようなものです。
でも、そんなささやかな行為が、私たちの睡眠や日常生活に意外と深刻な影響を及ぼしていることを知る機会はあまりありません。
ある研究チームが、世界中のスマートフォンユーザー21,222人を対象に、睡眠トラッキングアプリを通じて収集した約300万回もの睡眠データを解析したところ、実に55.6%の睡眠がスヌーズアラームで終わっていました。
平均すると、一度に2.4回スヌーズを押し、約10.8分をぼんやりとした眠りの延長に費やしていることになります。
男女の違いにも面白い傾向が見えました。
女性のほうが男性よりもスヌーズを頻繁に押していて、回数は女性が平均2.5回、男性は2.3回。女性は11.5分、男性は10.2分と、わずかですが差がありました。
この差の背景には、女性が不眠症になりやすいというデータや、家事や育児といった日々のタスクが睡眠時間を押しつぶしている可能性も考えられます。
睡眠時間との関連を見てみると、意外なことに、長時間眠った人ほどスヌーズを頻繁に使っていました。
推奨される7~9時間を超える10時間以上の睡眠をとった人たちは平均約5.9回もスヌーズを押していたのです。
一方で、短い睡眠(6時間以下)をとった人は、平均して約2.4回のスヌーズで済んでいました。
長く眠った人ほどスヌーズを使うという結果は、もしかすると過眠症や蓄積した疲れを回復しようとする身体の反応なのかもしれません。
曜日ごとの傾向も興味深く、平日の月曜から金曜まではスヌーズを多く使い、週末にはぐっと使用回数が減ります。
土日は予定が少なく、ゆっくり起きられるからでしょう。
国ごとに見ると、スウェーデンやドイツ、アメリカなどの国々ではスヌーズの使用が多く、日本やオーストラリアでは比較的控えめでした。
また、季節によっても微妙な違いが見られ、北半球では冬の12月、南半球では冬にあたる7月がスヌーズ利用のピークでした。
これは、おそらく冬場の短い日照時間や寒さが人々の目覚めを遅らせる原因になっているからでしょう。
睡眠の専門家は、スヌーズボタンを多用すると、睡眠が細切れになってしまい、起床後の疲れや日中のパフォーマンスに悪影響を及ぼす可能性があると警告しています。
特にスヌーズを頻繁に使う人ほど、就寝や起床時間が不規則で、睡眠の質に問題を抱えている可能性があります。
理想的なのは、本当に起きるべき最後の時間にアラームを設定して、まとまった睡眠を取ることです。
寝る時間を一定に保ち、夜間の電子機器の使用を控えるなど、日常的に少しずつ工夫してみることも大切です。
「あと5分」がもたらす影響は、実は想像以上に大きいのかもしれません。
明日の朝、あなたが再びスヌーズを押す前に、少しだけそんなことを思い出してみませんか。
参考文献:
Robbins, R., Sääf, D., Weaver, M.D. et al. Snooze alarm use in a global population of smartphone users. Sci Rep 15, 16942 (2025). https://doi.org/10.1038/s41598-025-99563-y
