紹介した論文の音声概要を、NotebookLMでポッドキャスト化してみました。あわせてお楽しみください。
現代のダイエット方法といえば、「何を食べるか」または「何を食べないか」に焦点が当たりがちです。
カロリー計算、糖質制限、高タンパク質、地中海式など、さまざまなアプローチがあります。
しかし最近、「いつ食べるか」を意識する「時間制限食(TRE:Time-Restricted Eating)」が注目されています。
スペインのグラナダ大学のジョナタン・ルイス博士らは、過体重または肥満の成人99人を対象に、3か月間、1日8時間以内の食事時間に制限する実験を行いました。
この研究では、朝10時前に食事を始める「早いTRE」、午後1時以降に始める「遅いTRE」、自由に時間を選べる「自己選択TRE」、そして従来通り12時間以上食事可能な「通常の食事パターン」の4グループに分けて比較を行いました。
朝型の人は、早いTREで朝日の中トーストをかじり、夜型の人は、遅いTREで星空を眺めながらパスタを巻く、そんな自由さもこの方法の魅力です。
12週間後、通常の食事グループは平均1.4kg(-1.5%)の体重減少でしたが、TREを導入したグループはこれを大きく上回りました。
早いTREグループは4.2kg(-4.5%)、遅いTREグループは3.1kg(-3.5%)、自己選択TREでも3.8kg(-3.9%)減少しました。
また、ウエストやヒップのサイズも改善され、特に早いTREグループではウエストが4.1cm、ヒップが4.6cm減少しました。
さらに注目すべきは、実験終了1年後も早いTREと遅いTREのグループでは、それぞれ2.2kgと2.0kgの減量が維持されていた点です。
自己選択TREでも一定の効果がありましたが、食事時間のばらつきが大きいため、安定性が低かった可能性があります。
ただし、食事の時間を制限することで、朝食を抜いた結果、ぼんやりと会議に出席する羽目になる―なんて事態も起きないわけではありません。
専門家からも、栄養バランスが崩れる可能性や、正確な効果評価には食事記録が重要だとの指摘があります。
とはいえ、TREの最大の魅力はそのシンプルさです。
「8時間以内に食べる」という単純なルールは、私たちの忙しい日常にも取り入れやすそうです。
難しいカロリー計算をせず、無理なく続けられるこの方法は、私たちの新たな健康習慣となり、生活をちょっと豊かにしてくれるかもしれません。
参考文献:
Dote-Montero, M., Clavero-Jimeno, A., Merchán-Ramírez, E. et al. Effects of early, late and self-selected time-restricted eating on visceral adipose tissue and cardiometabolic health in participants with overweight or obesity: a randomized controlled trial. Nat Med 31, 524–533 (2025). https://doi.org/10.1038/s41591-024-03375-y
