紹介した論文の音声概要を、NotebookLMでポッドキャスト化してみました。あわせてお楽しみください。
年齢を重ねるにつれて、健康をどう維持していくかは、誰にとっても重要なテーマです。
「健康のためには運動が良い」、そんな言葉はもう聞き飽きたという方も多いかもしれませんね。
では、一人で淡々と行う運動と、仲間と一緒に楽しむチームスポーツは、心身の健康に違いをもたらすのでしょうか?
そんな疑問に応える研究が、日本で行われました。
対象は40歳以上の男性5761名。サッカーをしている人、ランニングなどの個人スポーツをしている人、スポーツを全くしていない人の3つのグループに分けて、「SF-36」という世界的に使われる質問票を用い、それぞれの体と心の健康状態を数値化して比較しました。
身体面の総合スコアを見ると、実は大きな差はありませんでした。
ただし細かく見ると、サッカーをする人たちは「身体機能」や「日常生活における役割遂行」、「一般的健康感」といった項目では他より良い結果でした。
一方で、「身体の痛み」についてはスコアが低く、これは接触プレーなどの影響なのでしょう。
確かに、「ちょっと無理をしたら、翌日はロボットみたいな動きになった」という冗談は、私たちの年代ではよく聞く話です。
年齢とともに体のケアがより必要になることを示しているのかもしれません。
一方、精神面に関しては、明らかに違いがありました。
サッカーグループの精神的健康のスコアは平均56.2点で、個人スポーツグループ(52.2点)や運動をしていないグループ(48.9点)を大きく上回っています。
これは統計的にも意味のある差であり、「活力」「社会生活機能」「心の健康」といった項目すべてにおいて、サッカーをしている人たちが高い評価を得ていました。
サッカーというチームスポーツが、なぜ精神面に良い影響を及ぼすのでしょうか。
研究では、仲間との密なコミュニケーションや連携プレー、そして試合後の何気ない会話などの社会的交流が、特にストレスの多い中年期以降の精神的支えになっている可能性が指摘されています。
確かに、試合後に汗を拭きながら仲間と交わす「今日のパスはなかなかだったね」といった他愛ない会話は、心をふっと軽くするものです。
また、チームとして目標に向かって努力することで、自己肯定感やモチベーションも高まるのかもしれません。
もちろん、この研究はあくまで一時点での調査であるため、「サッカーをしているから精神的に元気」と断定することはできません。
ただ、体を動かす際に「心の健康」という視点を加えると、選ぶスポーツが違ってくるかもしれません。
日本サッカー協会(JFA)がシニア向けに設けた「試合時間の短縮」や「自由な交代ルール」といった工夫もあり、中高年以降も続けやすい環境が整っています。
身体を動かす目的はさまざまですが、「心の豊かさ」を目的の一つに加えてみるのはいかがでしょうか。
仲間と一緒に汗を流す週末は、思ったよりもずっと心地良い時間になるかもしれませんね。
参考文献:
Sawa R, Miyamori T, Nagao M, et al. Participation in football and health-related quality of life among middle-aged and older men. BMJ Open Sport Exerc Med. 2025;11(2):e002007. Published 2025 Apr 15. doi:10.1136/bmjsem-2024-002007
