CGM(持続血糖測定器)とは、皮膚の下の組織にある間質液のグルコース濃度を連続的に測定する機器です。
通常、血糖測定というと文字通り血液の糖を測定するものですが、CGMの場合はその辺が少し違っています。
500円玉ほどの大きさの円形センサーで、それを皮膚に貼り付けて使用します。
実際の血糖値とは若干のタイムラグがあり、間質液のグルコース濃度が血糖値の変動を遅れて反映するため、あくまで血糖値の「推定値」として扱われます。
糖尿病の方が日常的に血糖値の変化を確認するために利用するほか、最近では健康管理に気を配る一般の方にも広まっています。
糖質管理に役立つと思われているこのCGMですが、その精度には注意が必要であることが最近の研究で明らかになっています。
英国バース大学の研究グループが行った実験によると、CGMは食後の血糖値を実際よりも高く見積もる傾向があり、その誤差は食べた食品や人によっても異なっていました。
この研究では健康な男女15名(女性9名、男性6名)が参加し、50gの糖質を含むさまざまな食品や飲料を摂取しました。
実験では、ブドウ糖を含む飲料のほか、果物をそのまま食べたり、果物をブレンドしたもの、市販のスムージー、ゆっくりと飲んだスムージー、イヌリンという食物繊維を追加したスムージーなどが用意されました。
血糖値はCGMと指先からの毛細血管採血(標準的な測定法)でそれぞれ測定されました。
その結果、CGMが示した空腹時および食後の血糖値は、毛細血管採血に比べて平均で0.9 mmol/L高く表示されました。
また、この誤差は食品の種類によって異なり、市販のスムージーのような食品ではCGMの値が特に高く出る傾向がありました。
たとえば、このスムージーはCGMで測定すると白米や食パンを食べた後と同じような高い数値になってしまいますが、実際には毛細血管測定法ではそれほど高くなく、「中程度(53)」と判断されていました。
さらに問題となるのは、CGMの精度が個人によっても大きく異なるという点です。
これはちょうど料理の味付けが人によって「ちょっと甘め」「かなり辛め」と感じ方が違うのに似ています。
15人の参加者の間で、CGMが空腹時血糖値をどのくらい高く見積もるかには統計的に有意な違いがあり、しかもBMIや年齢などの基本的な要素では説明がつきませんでした。
つまり、CGMの精度は人によって違うため、一律の補正では対応しきれないのです。
CGMは便利で、糖質管理を手軽に行えるイメージがありますが、食後の血糖値を正確に測定するためには、やはり指先の採血による毛細血管測定法の方がより信頼できる方法であることが改めて示されました。
特に、健康な人がCGMのデータだけを参考に食品選びや食生活を変える場合には注意が必要でしょう。
健康な食生活や血糖管理を心がける上で、測定の正確性はとても重要です。
この研究結果を踏まえると、CGMを使った食事の選び方や血糖管理には、慎重さが求められます。
とはいえ、CGMをまるっきり敬遠する必要もありません。
「ちょっとそそっかしいけど憎めない友人」のように、付き合い方さえ分かればきっと役に立つはずです。
参考文献:
Hutchins KM, Betts JA, Thompson D, Hengist A, Gonzalez JT. Continuous glucose monitor overestimates glycemia, with the magnitude of bias varying by postprandial test and individual – a randomized crossover trial. Am J Clin Nutr. Published online February 26, 2025. doi:10.1016/j.ajcnut.2025.02.024
