注射って、いくつになってもドキドキするものです。
特に、新型コロナのワクチン接種のときは、「ちゃんと効くかな?」「副作用は大丈夫かな?」などという考えが頭をよぎった人も多かったことでしょう。
実は、このワクチンに対する「考え方」、つまり「マインドセット」が、接種後の体験や効果に影響を与えることが最新の研究で明らかになりました。
アメリカのカリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究チームは、534人の成人を対象に、ワクチンに対するマインドセットと接種後の反応を詳しく調査しました。
具体的には、以下の3つのマインドセットに焦点を当てました。
1. ワクチンの有効性:「このワクチンはしっかりコロナを防いでくれる」という信念。
2. 身体反応への自信:「自分の体はうまくワクチンに反応するはず」という考え方。
3. 副作用の意味付け:「副作用があるということはワクチンが効果を発揮している証拠だ」という捉え方。
研究では、ワクチン接種の前にそれぞれのマインドセットをアンケートで測定し、接種後1か月と6か月に抗体の量を測定、さらに接種直後から5日間、副作用や感情の変化(ストレス、悲しみ、幸福感)を記録しました。
その結果、興味深いことがわかりました。
まず、「副作用はワクチンが効いている証拠だ」と考える人ほど、実際に抗体の量が高かったのです。
一方、「ワクチンは有効で、自分の体は良く反応する」と前向きに考える人たちは、副作用の種類が少なく、接種直後の不安感も軽減されていました。
特に、マインドセットのスコアが1単位上がるごとに、副作用の報告が約18%減るという具体的な数値も示されています。
また、ワクチン接種後数日間の気分にも影響が見られ、前向きなマインドセットを持つ人はストレスや悲しみが少なく、幸福感が高い傾向にありました。
これらの結果は、単なる楽観主義とは異なる、ワクチンに特化した考え方が影響していることを示しています。
もちろん、ワクチン自体が持つ安全性や効果性は確かなものです。
しかし、この研究は、接種時の気持ちの持ち方を少し変えるだけで、副作用の感じ方や心の負担が軽減され、場合によっては免疫反応まで改善する可能性があることを示唆しています。
「これは体が免疫を作っている証拠だ」「自分の体は大丈夫」と少しポジティブに捉えてみることで、注射へのドキドキが少しだけ穏やかな気持ちに変わるかもしれません。
私たちの心と体は、想像以上に深く繋がっているようです。
参考文献:
Guevarra DA, Dutcher EG, Crum AJ, Prather AA, Epel ES. Examining the association of vaccine-related mindsets and post-vaccination antibody response, side effects, and affective outcomes. Brain Behav Immun Health. 2024;40:100818. Published 2024 Jul 16. doi:10.1016/j.bbih.2024.100818
