最近では、お掃除ロボットが部屋をきれいにしてくれたり、スマートフォンが私たちの質問に答えたりと、「AI(人工知能)」はずいぶん身近な存在になりました。
実は病院でも、診断支援や治療計画など、AIの活躍が目立つようになっています。
でも、自分の体のことをAIに任せるとなると、やはり不安に感じるのが正直なところでしょう。
2023年、アメリカの研究グループが2039人の成人を対象に「AIを信頼しているか?」を調査しました。
その結果、約66%(65.8%)が「医療機関がAIを責任を持って利用しているとは信頼できない」と回答。さらに約58%(57.7%)は「AIが自分に害を与えないように守ってくれるとは信じられない」と感じていました。
興味深いことに、AIに詳しいかどうかや健康情報の理解力(ヘルスリテラシー)は信頼度とあまり関係がありませんでした。
一番影響が大きかったのは、もともとの医療システムへの信頼感です。
普段から医療システムを信頼している人は、AIに対しても安心感を持つ割合が約4倍高かったのです。
一方で、医療現場で差別的な経験をしたことがある人ほど、AIに対する信頼感は低くなりました。
男女の差も見られました。
AIが責任を持って利用されていると感じるのは男性の方が多い一方、AIによる危害への不安には男女差がありませんでした。
性別を問わず、「未知のリスク」への不安が共通しているようです。
つまり、AIがどんなに進歩しても、患者さんと医療機関の間にしっかりとした「信頼関係」がない限り、安心して任せることは難しいのです。
AIを効果的に活用するには、医療機関がどのようにAIを利用し、どんなリスク管理をしているかを明確に伝えることが必要です。
これからの医療では、技術の進歩と同じくらい、普段からの丁寧なコミュニケーションや、誰もが安心して医療を受けられる環境づくりが大切になってきます。
AIが私たちの健康を支える「優秀な助手」として活躍するためには、人と人との温かい関係性がより重要だということになりますね。
参考文献:
Nong P, Platt J. Patients’ Trust in Health Systems to Use Artificial Intelligence. JAMA Netw Open. 2025;8(2):e2460628. Published 2025 Feb 3. doi:10.1001/jamanetworkopen.2024.60628
