歳をとっても元気で長生きできる人たちには、一体どんな秘密があるのでしょう。
その答えのヒントが、最近の研究から明らかになったかも知れません。
研究者たちが着目したのは「言葉の流暢さ」でした。
ベルリン加齢研究(Berlin Aging Study)では、平均年齢約85歳の高齢者516人を対象に、最大18年間にわたる追跡調査が行われました。
その中で調べられたのは、認知能力の様々な側面です。
具体的には、知覚速度、記憶力、言葉の流暢さ、言語知識といった能力がテストされました。
この研究の特徴は、それぞれの能力が時間とともにどのように変化していくのか、その「変化率」まで計測している点にあります。
ここで面白い結果が出ました。
実は、言葉の流暢さが特に「長生き」と深い関係があることが分かったのです。
例えば、1分半の間にできるだけ多くの動物の名前を挙げる課題や、「S」で始まる単語を思いつく限り挙げる課題において、スコアが高かった人ほど、寿命が長い傾向が明確に認められました。
動物の名前を1つ多く挙げられると死亡リスクが約5.6%下がり、「S」で始まる単語を1つ多く挙げられると約3.7%下がったのです。
それだけではありません。
動物の名前を挙げる課題で最も成績が良かったグループは、成績が低かったグループに比べ、なんと平均して約9年も寿命が長いという結果になりました。
この言葉の流暢さのテストが他の認知テスト(記憶や知覚速度)や全般的な知能を測るテストよりも強く生存を予測していたことも興味深い点です。
研究者は、なぜ言葉の流暢さが寿命と関係しているのかについて、言葉の流暢さが脳の前頭葉などの重要な部分の健康状態を反映しているからだろうと考えています。
特に前頭葉は、認知機能全般や健康維持に深く関係する部位です。
つまり、言葉がスムーズに出てくるということは、それだけ脳が健康で、全体的な身体機能も良好である可能性が高いのです。
人生100年時代といわれる現代。
健康で豊かに歳を重ねるためには、体だけでなく、言葉や脳を日々活発に使ってあげることが大切なのかもしれません。
以前、ニンテンドーDSの「大人の脳トレ」が流行っていた頃、私も一時期試しましたが、すぐに飽きてしまった経験があります。
今考えると、あれって大事だったんですね。
こうして健康寿命と関係があるという研究結果を知ると、続けておけばよかったと思います。
今からでも、Switch版のゲームソフトを探してみようかな。
参考文献:
Ghisletta P, Aichele S, Gerstorf D, Carollo A, Lindenberger U. Verbal Fluency Selectively Predicts Survival in Old and Very Old Age. Psychol Sci. 2025;36(2):87-101. doi:10.1177/09567976241311923
