健康寿命を伸ばしたい ― そんな願いは誰しもが抱いています。
けれども、「じゃあ、何を食べれば健康でいられるのか」という問いに対して、明快な答えは今まで示されてきませんでした。
そのほとんどが、「バランスのとれた食事」というのが定番でしたし、具体的な食材を知りたいのに、いつも肩透かしを食らってきました。
最近発表されたハーバード大学などの研究グループによる30年間に及ぶ調査結果は、この疑問に明確な答えを示してくれています。
研究者たちは、米国の男女約10万人(女性66%、平均年齢53歳)を対象に、8種類の健康的な食生活パターンを長期間観察しました。
そして70歳まで慢性疾患なく認知機能、身体機能、精神的健康を維持しているかどうかを分析しました。
その結果、最も健康的な食事パターンとして浮上したのが「代替健康食指数(Alternative Healthy Eating Index:AHEI)」でした。
この食事法を最も忠実に守った人々は、そうでない人々に比べ、健康的に加齢できる確率がなんと1.86倍も高かったのです。
さらに健康寿命を75歳までとした場合、その差は2.24倍にまで広がりました。
では、具体的にはどんな食事が推奨されるのでしょう?
研究が明らかにした健康的な食事の要素をまとめると以下のようになります。
– 果物(特にベリー類)や野菜(緑黄色野菜や葉物野菜)を多く摂る
– 全粒穀物や豆類、ナッツ類を日常的に食べる
– 不飽和脂肪酸(オリーブオイルなど)を意識して取り入れる
– 赤肉や加工肉、トランス脂肪酸、塩分、砂糖入り飲料を控える
意外なことに、この研究では加工食品の多い食生活をしていると、健康的に加齢できる可能性が32%も低くなってしまうことも分かりました。
忙しい日常の中でついつい頼りがちな加工食品ですが、新鮮な食材を使った家庭料理が、断然に勝っているようです。
今回の研究結果は、「健康的な食生活」は単に病気予防に役立つだけではなく、心身の機能を保ちながら歳を重ねるためにも非常に重要であることを示しています。
食事は毎日の小さな積み重ねですが、その選択が私たちの老後の生活の質を大きく左右することが明らかになったのでした。
食事は私たちの体を構成する材料となり、エネルギーの供給源となるわけですから、当然といえば当然ですね。
参考文献:
Tessier, AJ., Wang, F., Korat, A.A. et al. Optimal dietary patterns for healthy aging. Nat Med (2025). https://doi.org/10.1038/s41591-025-03570-5
