70代からでも間に合う!運動が腎臓にもたらす効果

70代からでも間に合う!運動が腎臓にもたらす効果

 

長期にわたる体力づくりが腎臓にも良いかどうかを調べたユニークな研究が、ノルウェーのトロンハイムで行われました。

研究対象は70~77歳の住民1,156人で、平均年齢は72歳。高齢になるほど慢性腎臓病(CKD)のリスクが高まりますが、実際に運動で防げるかどうかの証拠は意外と乏しかったのです。

 

そこで研究チームは、運動の強度が腎機能にどのような影響を与えるのか、5年間かけて詳しく調べました。

参加者は、中強度連続トレーニング(MICT)群、高強度インターバルトレーニング(HIIT)群、そして一般的な運動推奨を伝えるだけの対照群の3つに分けられました。

 

具体的な運動内容は以下のとおりです。

 

– MICT群:週2回、最大心拍数の約70%で50分間の運動を実施(380人)

– HIIT群:週2回、最大心拍数の約90%で4分間を4セット実施(391人)

– 対照群:「週150分以上の適度な運動」を推奨するのみ(385人)

 

5年後、腎機能の指標(eGFR)が年あたり5mL/min/1.73m²以上低下した「急速な腎機能低下」が起きた割合は、対照群が30%、MICT群は28%でした。

ところがHIIT群は23%と明らかに少なく、統計解析でもHIIT群は対照群より有意にリスクが低かったのです(RR=0.75、95%信頼区間0.59~0.95)。

運動強度が高いほど腎機能の低下リスクが下がる「用量反応関係」も確認されました(P for trend=0.02)。

 

また、運動量を増やした人に焦点を当てた追加分析では、1週間あたりの中高強度運動を20分以上増やした場合、「急速な腎機能低下」リスクが約27%も減少しました。

運動習慣を改善することで、腎臓の健康を維持できる可能性が示されたのです。

 

今回の研究の特徴は、腎機能の評価に筋肉量の影響を受けにくいシスタチンCを用いたこと、約5年間の長期間で実施されたことです。

ただし参加者は比較的健康で運動意欲が高いグループだったため、病気を抱える人や他地域の高齢者にもそのまま当てはまるかは慎重に考える必要があります。

 

それでも、運動習慣が高齢者の腎機能維持に役立つことは、健康長寿を目指すうえで大切なメッセージです。

高強度インターバルトレーニングという効率的な運動方法が、心臓や血管だけでなく腎臓にもプラスに働くという結果は、多くの人にとって励みになるでしょう。

 

参考文献:

Hallan SI, Øvrehus MA, Shlipak MG, et al. Long-Term Physical Exercise for Preventing CKD in Older Adults: A Randomized Controlled Trial. J Am Soc Nephrol. Published online February 4, 2025. doi:10.1681/ASN.0000000636