新型コロナウイルスの影響で、多くの人がオンライン会議や授業に参加するようになりました。
その結果、画面に映る自分の姿を何度も見るうちに、自分の顔や外見が気になりすぎる現象が生まれました。
これを「Zoom醜形症(Zoom Dysmorphia)」と言います。
イランのジャフロム医科大学では179人の医学生を対象に、「Zoom醜形症」について調査が行われました。
その結果、この症状の平均スコアは65.9(31~155の範囲)で、中くらいの強さであることが分かりました。
さらに、自分ができると信じて行動を続ける力(自己効力感)と、自分の外見に対して感じる強い不安感(身体醜形懸念、ディスモルフィック・コンサーン)との関係についても調べています。
調査によると、自分の外見を必要以上に気にしてしまう気持ち(ディスモルフィック・コンサーン)が強いほど、Zoom醜形症が起きやすくなることが分かりました(相関係数r=0.74)。
具体的には、この外見への不安が強くなると、Zoom醜形症になる可能性は約2.86倍に高まります。
「ディスモルフィック・コンサーン」とは、細かな外見の特徴まで過剰に気にしてしまう心理状態を指します。
一方、「醜形症(Body Dysmorphic Disorder)」は、その不安がさらに強くなり、日常生活に影響が出てしまうほど深刻な心の病気です。
つまり、「ディスモルフィック・コンサーン」は一般的な不安を指し、「醜形症」ほど重くない広い範囲の概念なのです。
また、自分に自信がある学生ほど、このZoom醜形症の影響を受けにくいことも分かりました(r=-0.26)。
興味深いことに、性別や学部による違いは見られませんでした。
これまでの研究では、特に女性が外見への不安を感じやすいとされていましたが、医学を学ぶ学生の場合、その傾向は明らかではありませんでした。
これは、医学を学ぶ学生は健康や心理についての知識が豊富で、オンライン環境での外見への不安を客観的に考えやすいからかもしれません。
Zoom醜形症と最も強く関係していたのは、「メタ認知的コントロール戦略」(r=0.95)という能力でした。
これは、自分がどのような考えや感情を持っているかを自覚し、それを上手くコントロールする力のことです。
簡単に言うと、「自分がなぜ不安を感じているのか、その理由を理解してコントロールする力」です。
Zoomのような状況では、自分の顔を見ることでこの能力が試されるというわけです。
結論として、Zoom醜形症を軽くするには、自分の外見への不安に対する心のサポートと、自分を信じる力を高めることが重要になります。
オンライン上で自分の見た目が気になるという問題は、一見小さなことに思えますが、積み重なると勉強や日常生活にも影響します。
自信をつけ、自分の外見への不安を落ち着いて見つめられるようになることが、Zoom醜形症への効果的な対処法となります。
オンラインの時代に必要なのは、自分に対して優しく見つめてあげる視点なのかもしれませんね。
参考文献:
Mosalanejad L, Karimian Z, Ayaz R, Maghsodzadeh S, Sefidfard M. Zoom dysmorphia in medical students: the role of dysmorphic concern and self-efficacy in online environments amidst COVID-19 pandemic. BMC Med Educ. 2024;24(1):1330. Published 2024 Nov 19. doi:10.1186/s12909-024-06300-6
