インフルエンザは毎年、多くの人々の健康に影響を与えるウイルスですが、特に子どもたちには深刻な合併症を引き起こす可能性があります。
最近、米国疾病対策センター(CDC)が発表した調査によれば、2010–11シーズンから2024–25シーズンにかけて、小児のインフルエンザ関連死亡1,840例のうち166例(約9%)に脳症または脳炎が確認されました。
この調査結果は、CDCが毎週発行する『Morbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)』に掲載されています。
MMWRは、米国各地での疾病発生状況や公衆衛生に関する情報を迅速に提供するための重要な報告書です。
各シーズンにおけるインフルエンザ関連脳症・脳炎(IAE)の発生率は一定ではなく、最も低かった2020–21シーズンは0%でしたが、高かった2011–12シーズンには14%に達しています。
最新の2024–25シーズンに限ってみると、68例中9例(13%)でIAEが報告され、そのうち4例は急性壊死性脳症(ANE)という特に重篤な状態でした。
ANEは急激に神経症状が悪化し、予後も厳しいことで知られています。
IAEの分析では、亡くなった子どもたちの年齢の中央値が6歳で、約54%が基礎疾患を持っていなかったことも報告されました。
さらに、このシーズンのインフルエンザワクチン接種率が20%と非常に低いことや、IAE発症後の93%の症例で人工呼吸器が必要となったことなど、インフルエンザ感染後の急速な症状進行が示されています。
肺炎(33%)、急性呼吸促迫症候群(34%)、敗血症(28%)といった合併症の併発も報告されました。
こうしたデータから見えてくるのは、単なる数値の羅列ではなく、予防接種の重要性や迅速な医療対応がいかに必要かという現実です。
急性期に抗ウイルス薬を早期に投与することで、脳症の悪化を抑える効果があることも指摘され、医療の現場では期待が高まっています。
この調査結果は、医療関係者のみならず、子どもを持つ家庭や一般の人々にとってもインフルエンザ対策を再検討する重要なきっかけとなります。
特に子どもたちの安全を守るためには、予防接種を積極的に受けること、早めに診断・治療を受けることが何より重要です。
社会全体でこうした理解を共有し、一人ひとりが行動に移すことが、子どもたちの笑顔と健康を守る確かな一歩になることでしょう。
参考文献:
Fazal A, Reinhart K, Huang S, et al. Reports of Encephalopathy Among Children with Influenza-Associated Mortality – United States, 2010-11 Through 2024-25 Influenza Seasons. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2025;74(6):91-95. Published 2025 Feb 27. doi:10.15585/mmwr.mm7406a3
