手術を受ける日が、その後の健康状態に影響を与えるかもしれない、という話を聞くと、にわかには信じがたいかもしれません。
しかし、医療現場では以前から「週末効果」と呼ばれる現象が問題視されてきました。
これは、週末に病院のスタッフが減少したり、医療機器や検査が制限されたりすることにより、提供される医療の質が低下する現象です。
この「週末効果」が手術後の経過にも影響するのかを調べるため、カナダ・オンタリオ州では約43万人もの患者を対象にした大規模な研究が行われました。
この研究では、金曜日などの週末直前に手術を受けた患者と、月曜日など週末明けに手術を受けた患者を比較しました。
研究の結果は明らかでした。
週末直前に手術を受けた患者は、術後30日以内の死亡率・合併症・再入院リスクが、週末明けに手術を受けた患者よりも高かったのです。
具体的には、30日以内の死亡率が約9%、合併症や再入院のリスクも約5%高まりました。
この影響は、術後90日後、さらには1年後にも継続して確認されました。
この結果の理由として、研究者は以下の要因を挙げています。
- 週末には医療スタッフの数が減り、術後の急変に迅速に対応する能力が低下してしまう。
- 金曜日に手術を担当する医師の中には経験の浅い医師が多く、複雑な事態に十分対応できない可能性がある。
- 週末は高度な医療検査や迅速な処置が制限されるため、術後に問題が生じても即座に対応できない。
- 退院を決定する担当者が週末に少なくなり、患者の入院期間が延びる可能性がある。
また、この研究の特徴として興味深いのは、緊急手術については週末直前でも即座に対応することで結果がむしろ改善するケースもあったことです。
これは、緊急の場合は治療の遅れが状態悪化に直結するためであると考えられます。
医療現場においては、「曜日による質の違い」が存在してはなりません。
この研究が示したように、手術の曜日が予後を左右してしまうという状況は、病院の管理体制や人員配置の再検討を強く促しています。
つまり、週末であろうと平日と同様の質の高い医療が提供されるよう、医療システム全体での見直しが必要であることを示唆しています。
参考文献:
Ranganathan S, Riveros C, Tsugawa Y, et al. Postoperative Outcomes Following Preweekend Surgery. JAMA Netw Open. 2025;8(3):e2458794. doi:10.1001/jamanetworkopen.2024.58794
