ブルーライトは「朝型」の味方

ブルーライトは「朝型」の味方

 

私たちの暮らしは、朝起きた瞬間から眠るまで、さまざまな光に包まれています。

特に、「ブルーライト」は気になる存在です。

スマートフォンやパソコンの画面からも出ている青色の光は、睡眠に悪影響があるとして問題視されることも多いのですが、一方で朝の時間帯に上手に利用すれば、むしろ睡眠を改善する効果が期待できるようです。

 

ここに、イギリスのサリー大学の研究チームが実施した興味深い研究があります。

彼らは36人の健康な60歳以上の高齢者を対象に、自宅で簡単にできる「光の治療」を行いました。

参加者はブルーライトを多く含む白色光(色温度17,000K)と、通常の白色光(4,000K)の両方を、朝と夜それぞれ2時間ずつ浴びました。

研究期間は11週間にわたり、3週間ずつの光の照射と休息期間(ウォッシュアウト)を交互に設けるという方法でした。

 

さて、その結果はどうなったでしょうか?

 

実は、ブルーライトの影響は、使うタイミングによって「良くも悪くも」なることがわかったのです。

朝の時間にブルーライトを浴びると、日中の活動のリズムが整い、睡眠の乱れが少なくなりました。

具体的には、朝のブルーライトを長く浴びるほど、一日の活動リズムが規則正しく安定し(活動リズム安定性が約10%改善)、睡眠の分断が減少するという嬉しい効果がありました。

一方で、夕方のブルーライトは逆に、寝つきが悪くなり、睡眠の効率が低下する(眠りが浅くなる)というマイナスの効果が現れました。

 

また、この研究からは、日中に強い光(2500ルクス以上)を多く浴びると、昼間の活動量が増えて、より活発に過ごせるようになり、さらに寝る時間が早まることもわかりました。

実際、日中の強い光の照射時間が増えるほど、寝る時間が約1時間程度早まったという具体的なデータも示されています。

 

つまり、ブルーライトは「悪役」ばかりではなく、正しく利用することで、特に高齢者にとって有効な健康法になる可能性があります。

ポイントは「タイミング」です。

朝は積極的にブルーライトを取り入れ、夕方以降は控える。このメリハリが、良い睡眠を確保し、健康的な生活を送る秘訣だと言えるようです。

 

身近な例で考えてみると、例えば朝の散歩や庭での日光浴は自然なブルーライトを浴びる絶好の機会です。

逆に、夜は画面の明るさを控えたり、ブルーライトを抑えるモードを活用すると良いでしょう。

 

今回の研究が示した大切なことは、「光を味方にするか敵にするかは、使い方次第」ということですね。

自分の生活の中に、朝の光を少し意識的に取り入れるだけで、睡眠の質が大きく改善されるかもしれません。

光の力をうまく使い、毎日をより快適に過ごしたいものです。

 

参考文献:

Barroggi Constantino D, Lederle KA, Middleton B, et al. The bright and dark side of blue-enriched light on sleep and activity in older adults. Geroscience. Published online January 17, 2025. doi:10.1007/s11357-025-01506-y