怒りっぽい男性ほど、女性パートナーから知性が低いと見なされやすい

怒りっぽい男性ほど、女性パートナーから知性が低いと見なされやすい

 

人にはそれぞれ好みというものがあります。

そして、その好みに見合った恋愛相手を選ぶものでしょう。

たとえば「優しさ」や「知性」が挙げられることは多いですが、実際にパートナーと長く付き合っていくうえでも、これらの特性は重要とされています。

今回紹介する研究では、「怒りっぽさ」(怒りの傾向)が高い男性ほど、女性パートナーから知性が低いと判断され、カップル双方の満足度にも影響が及ぶことが示されました。

 

研究では、カップル合計148組(男性148名、女性148名)を対象としています。

参加者は18~80歳と年齢幅が広く、各自が別々に検査を受ける形式です。

具体的には以下を測定しました。 

 

怒りの特性(Trait Anger):自己評価式アンケート 

客観的な知能:レイヴン漸進的マトリックス(Raven et al., 1983)を用いた流動性知能テスト 

主観的な知能評価:自分自身の知能と、パートナーの知能を1~25点で評価 

関係満足度:質問票(Relationship Assessment Scale)で互いに回答 

 

まず、男性が怒りっぽいほど(怒りの特性スコアが高いほど)、その男性自身だけでなく女性パートナーも「関係に対してあまり満足していない」と答えました。

相関係数は概ね-0.20前後という結果もあり、男女双方の満足度にマイナスの影響が見られています。

さらに「女性がパートナー男性の知性をどの程度高く見積もるか」と、男性の怒りっぽさとのあいだに負の関連が確認されました。

ここで興味深いのは、「男性の客観的な知能」(テスト得点)を統計的にコントロールした後でも、怒りの高さが知性の印象を下げるという効果が残った点です。

モデルを構築したところ、男性の怒りを加えると女性のパートナー知能評価を説明する決定係数R²が0.08から0.10へ上昇し、追加的な影響が示唆されました。

 

さらに、怒りと満足度の関係は「女性がパートナー男性をどのくらい賢いとみなしているか」を介して変化しました。

具体的には、怒りの高い男性は女性に「知性的ではない」と思われやすく、それが男性自身・女性自身両方の関係満足度を低下させるという媒介効果が示されています。

一方、女性の怒りに関しては同様の有意な傾向が見られず、今回の研究では主に男性の怒りが焦点となりました。

 

この結果は、進化心理学の視点から、いわゆる「コンピテンス(知能などの有能さ)」と「コンパッション(優しさ、怒りの少なさ)」という2つの特質が、男女関係を考えるうえで大切であることを再確認させます。

とくに女性が男性を選ぶ際、優しさが欠けている(怒りっぽい)と感じると、その男性の知能までも低く見積もりがちで、結果として関係の満足度まで低下するようです。

これは生物学的にも女性側が抱えるリスク(出産や子育て)が大きい点を考慮したとき、男性に「資源をきちんと分かち合ってくれそうか(低い怒り)」「子どもの将来を支えるだけの知能がありそうか(高い知性)」という両面を期待していることと関連すると考えられます。

 

怒りをコントロールすることは円滑なコミュニケーションや衝突回避に役立つだけでなく、パートナーからの知的評価やお互いの満足度にも影響するようです。

また、知能はテスト得点だけではなく「周囲からどのように見られているか」も重要で、そこには怒りっぽさや優しさといった感情面が深くかかわっていると示唆されます。

社会的にも、対人関係における感情表現のしかたが互いの認識や信頼を左右する可能性は大きいです。

夫婦やカップルの健全なパートナーシップには「笑顔で話し合える空気づくり」と「理性的に行動できる態度」の両面が大切だといえます。

 

参考文献:

Górniak, J., Zajenkowski, M., Szymaniak, K., & Jonason, P. K. (2024). Kindness or Intelligence? Angry Men are Perceived as Less Intelligent by Their Female Romantic Partners. Evolutionary Psychology, 22(3). https://doi.org/10.1177/14747049241275706