犬をペットにすると認知症リスクが低下

犬をペットにすると認知症リスクが低下

 

犬との暮らしが、高齢者の認知症を予防するかもしれない。

 

日本に住む65歳以上の高齢者11,194人を対象に、約4年間の追跡調査が行われました。

その結果、現在犬を飼っている方は、過去に飼っていたか、もしくはまったく飼っていない方と比べて、要介護認定制度で定義される「日常生活が大きく制限される認知症」を発症するリスクが低かったのです。

 

具体的には、要介護認定による認知症の発症率が「犬を飼っている方」では3.6%、対して「飼っていない方」は5.1%でした。

この差を統計的に分析すると、オッズ比は0.60(95%信頼区間0.37~0.97)と算出されています。

 

一方、猫を飼っている方では4.5%対5.0%と、大きな差は認められませんでした。

 

研究チームによると、犬の散歩や世話は日常生活における運動量や外出機会の増加につながるため、身体活動が自然に促される可能性があるそうです。

また、犬を介して近所の方と挨拶や会話が生まれるなど、社会的なつながりを感じやすいという指摘もありました。

実際に「週に1回以上の運動習慣がある犬の飼い主」では認知症発症のオッズ比が0.37に下がり、「社会的孤立がない犬の飼い主」でも0.41という数値になっています。

 

もちろん、本研究は約4年間の観察期間であり、認知症リスクの要因がすべて解明されたわけではありません。

しかし、愛犬との暮らしが高齢者の身体的・社会的活動を後押しする点は興味深いといえます。

地域全体で高齢者が安心して犬を世話できる環境整備や支援体制が整えば、日常的な運動やコミュニケーションの機会が増え、結果として認知症の発症を抑える可能性が示されています。

介護予防の一環として、犬の存在が人々の生活にポジティブな変化をもたらすかもしれません。

 

参考文献:

Taniguchi Y, Seino S, Ikeuchi T, et al. Protective effects of dog ownership against the onset of disabling dementia in older community-dwelling Japanese: A longitudinal study. Prev Med Rep. 2023;36:102465. Published 2023 Oct 7. doi:10.1016/j.pmedr.2023.102465