「自分時間(Me-Time)」と呼ぶか「孤独(Isolation)」と呼ぶか
言葉の選択が感情や行動に影響を与えることは、興味深い研究テーマと言えます。
ここでは、一人でいる時間を「自分時間(Me-Time)」と呼ぶか「孤独(Isolation)」と呼ぶかで、人々の気分や行動がどのように変化するのかを調査した研究を紹介します。
研究1:言葉のイメージ調査
米国人成人500人を対象に、「Me-Time」「Time Alone」「Solitude」「Being Alone」「Isolation」という5種類の言葉について、ポジティブなイメージを持つか、健康的・楽しいと感じるかを尋ねました。
その結果、「Me-Time」が最も好印象で、「Isolation」が最も低い評価を受けました。ただし、「Isolation」であっても、平均的には完全にネガティブではなく中立的な評価でした。
さらに、回答者の自由記述をテキスト分析ソフトで分析したところ、「Me-Time」や「Solitude」と回答した人はポジティブな言葉を多用し、「Isolation」と回答した人はネガティブな言葉を相対的に多く使用する傾向が見られました。
研究2:「Me-Time」と「Isolation」による感情変化の比較実験
大学生176人を対象に、30分間の一人時間を過ごしてもらう実験を行いました。
被験者を「Me-Time」群と「Isolation」群にランダムに分け、実験前後の感情状態(ポジティブ・ネガティブ各10段階)と一人時間に対する考え方(「一人=快適」など複数項目の平均スコア)を比較しました。
すると「me-time」と呼ばれた群では、30分後のポジティブ感情が平均0.4ポイントほど上昇し、さらにネガティブ感情が比較的大きく下がりました。
一方「isolation」群ではポジティブ感情が約0.3ポイント低下し、ネガティブ感情の減少幅も小さめでした。
また「me-time」群は、一人の時間に対する認識や価値観が実験前よりポジティブに変化する傾向がみられたのも注目点です。
研究者たちは、この違いについて、「me-time」という言葉を使うだけで「自分をいたわる時間」という認識が強まり、気楽さや自律感が高まる可能性を指摘しています。
一方「isolation」は「人と切り離される」という連想を招き、必要以上に居心地の悪さを意識させてしまうのかもしれません。
もちろん、どんな言葉を使おうとも、そのときの体調や性格、抱えている問題などで感じ方は変わります。それでも簡単な言い換えが、気分を柔らかくする助けになるかもしれないという提案は興味深いところです。
一人時間には、読書や散歩のほか、何げない物思いにふけることもあります。そうしたひとときは、充電や頭の整理には役立つことが多いといわれます。
日々の中で「孤独」ではなく、「me-time」を少しずつ取り入れて一人で過ごすことを前向きに捉えられれば、意外な気づきやリフレッシュを得られるかもしれません。
参考文献:
Rodriguez M, Campbell SW. From “isolation” to “me-time”: linguistic shifts enhance solitary experiences. Cogn Emot. Published online January 15, 2025. doi:10.1080/02699931.2024.2445080
