人は女性のヒップを見るとき、いったいどこを見てしまうのでしょうか?
なにもイヤらしいお話をしようとするのではなく、美容整形の分野ではいたってマジメな研究対象らしいです。研究チームは、人の視線がどこに集中するかを調べるために、アイトラッキングという技術を使って調査しました。
この研究には、20~59歳の男女67人(男性28人・女性39人)が参加し、平均年齢は27.7歳でした。被験者には、7人の女性モデルのヒップをいろいろな角度から撮影した画像を見てもらいました。1枚の画像を6秒ずつ見せ、画像の切り替えの間に2秒間の白い画面を入れて、視線をリセットできるようにしました。
ヒップは10の部分に分けられ、その中でも特に注目されたのは、おしりの中央の割れ目(インターグルーティアル・クレフト)、ヒップの上や下の内側・外側、腰のくびれ(ヒップディップ)、おしりと太ももの境目(グルーティアルフォールド)などです。
視線のデータは、「最初に見るまでにどれくらい時間がかかったか」と「どれだけ長く見続けたか」の2つの基準で測定されました。結果として、最も長く見られたのは、おしりの割れ目で、平均0.87秒でした。男性は0.96秒、女性は0.81秒と、男性の方が少し長く見ていました。一方で、太ももの隙間は平均0.06秒と、ほとんど注目されていませんでした。
また、男女によって視線の動きには違いがありました。女性はヒップの外側や腰、おしりの境目を男性より長く見ていました。一方、男性は腰のくびれ(ヒップディップ)を女性より長く注視する傾向がありました。さらに、アジア系と白人系の参加者でも視線の動きに違いが見られました。たとえば、ヒップの内側やくびれの部分を長く見つめる傾向が異なっていました。
研究者は、「長く見られる部分が魅力的とは限らない」と指摘しています。興味や意外性で見つめることもあるため、今後の研究では、視線のデータと「どこが魅力的と感じるのか」という評価を組み合わせることが大切だと考えられています。また、この研究では、モデルが黒いTバックを着用しており、下着のデザインや色が視線の動きに影響を与えた可能性もあるとのことです。
この研究は、美容整形だけでなく、ファッションや広告デザインにも応用できるかもしれません。私としては、星新一の「宣伝の時代」にあったように、視線データをテーマにしたショートショートが書けそうな気もしています(笑)。
それにしても、「美しさの基準」は人によって違うため、視線データだけで決めつけることはできませんね。「何が魅力的なのか」を解明していくことが科学的にできるのかという疑問がまずあります。
参考文献:
Zeng R, Glaue E, Moellhoff N, et al. Eye-Tracking Insights into the Perception of Buttocks. Aesthetic Plast Surg. 2024;48(19):3936-3944. doi:10.1007/s00266-024-04257-x
