「問題に行き詰まって、いくら考えても解決策が見つからない…」そんな経験は誰にでもあるでしょう。しかし、昼寝をとって改めて取り組んでみたら、驚くほど鮮やかに解決の糸口が見つかってしまった。そんな経験も、また、あるかも知れません。
2024年にWesterbergらが行った研究によると、短い昼寝でもレム睡眠(REM)を含む場合、「類推的な転移」を用いた問題解決能力が向上する可能性が示されました。
この研究では、参加者を昼寝群と起床群に分け、「元問題」と「新問題」と呼ばれる2種類の課題を解いてもらいました。まず、参加者は「元問題」を学習し、解答を覚えました。次に、表面的には異なるものの、根本的な構造が似ている「新問題」に挑戦しました。ここで重要なのは、2つの問題を解く間に2時間の休憩が設けられたことです。起床群は屋外で自由に過ごしましたが、昼寝群は実験室で睡眠をとりました。昼寝群の平均睡眠時間は76.3分、そのうちREM睡眠は平均6.1分でした。
休憩前の段階では、両群の正解率に大きな差はありませんでした。しかし、2時間の休憩後に「解けなかった新問題」に再挑戦したところ、昼寝群の正解率は43%だったのに対し、起床群は15%と、明らかな差が見られました。さらに、記憶テストの結果、元問題の解答を思い出す力に両群間で差はなかったことから、単に記憶力の違いではなく、昼寝によって問題構造の類似性に気づきやすくなったと考えられています。興味深いことに、REM睡眠時間が長いほど、再挑戦後の正解率が高かったことも明らかになりました。
なぜ睡眠、特にREM睡眠が類推的な問題解決能力を高めるのでしょうか? それは、睡眠中に脳が新旧の情報を整理し、意外なつながりを見いだしやすくなるためと考えられています。夢を見ることが多いREM睡眠期には、脳内で自由な連想が起こりやすい生理学的特性があると考えられています。
この研究結果は、行き詰まりを感じた時でも、短い昼寝をとることで「ひらめき」が生まれる可能性を示唆しています。もちろん、昼寝の効果は個人差があり、万人にとって有効とは限りません。しかし、脳の情報処理機能を効率的に活用する上で、睡眠の重要性を再認識させてくれる興味深い研究と言えるでしょう。
勉強や仕事、アイデア創出に行き詰まった時は、ぜひ一度、短い昼寝を試してみてはいかがでしょうか。もしかしたら、眠りから覚めた時に、 思いがけない解決策が閃くかもしれません。
参考文献:
Westerberg CE, Fickle SE, Troupe CE, Madden-Rusnak A, Deason RG. An afternoon nap facilitates analogical transfer in creative problem solving. J Sleep Res. Published online November 27, 2024. doi:10.1111/jsr.14419
