猫は液体!?狭いところを通り抜ける能力

猫は液体!?狭いところを通り抜ける能力

 

猫は、狭い隙間や箱に入りたがる習性で知られています。その柔軟性を持つ体は、「猫は液体だ」というジョークを生み出すほどです。

その驚異的な柔軟性と、まるで身体のサイズを把握しているかのような動きは、多くの人の好奇心を刺激してきました。この猫の不思議な能力を科学的に解明しようと、ある研究が行われました。

 

実験方法

この研究には、飼い猫30匹が参加し、飼い主の協力のもと、自宅で実験が行われました。実験では、猫たちに2種類のパネルが用意されました。1つ目は幅が一定で高さが徐々に低くなるパネル、もう1つは高さが一定で幅が狭くなるパネルです。それぞれのパネルには、猫が通過できる開口部が5段階のサイズで用意され、最大の開口部から徐々に狭く、または低くすることで、猫にとって最終的には非常に困難なサイズになるように設定されました。

 

実験では、飼い主が猫を呼び、パネルの向こう側へ通過するように促しました。この時、猫がどのように開口部を通過するか、ためらう素振りを見せるか、あるいはジャンプするなど別の方法をとるかなど、猫の行動が詳細に観察・記録されました。

 

高さの変化する開口部での猫の行動

高さが低くなるにつれて、猫は通過をためらう様子を見せるようになり、特に最後の2段階では、多くの猫がためらい、あるいはジャンプなどの方法で開口部を乗り越えようとする行動が見られました。 また、体の大きな猫ほど、ジャンプなどの代替行動を選ぶ傾向が強くなりました。

 

幅の変化する開口部での猫の行動

一方、幅が狭くなる開口部では、ほとんどの猫がためらうことなく通過しました。これは、猫の体が非常に柔軟で、狭い隙間を通り抜けるのに適した骨格構造をしているためと考えられます。

 

猫の身体認識能力

この研究は、猫が置かれた状況に応じて、自身の身体サイズをどのように認識し、行動を変化させているのかを明らかにしました。高さの低い開口部では、猫は自身の体高を認識し、通過が難しいと判断した場合には、ジャンプなどの行動をとるなど、状況に合わせて行動を調整していることが分かりました。一方、幅の狭い開口部では、猫は自身の体の柔軟性を活かして、ためらうことなく通過する傾向が見られました。

 

具体的には、幅がわずか5cmの通路であっても、猫は問題なく通過することができました。しかし、高さが20cm以下の開口部になると、多くの猫がためらいを見せるという結果になりました。このことから、猫は周囲の環境を認識し、自身の身体能力と照らし合わせて、最適な行動を選択する高度な認知能力を持っていると考えられます。

 

猫の驚異的な柔軟性の秘密

猫の体は、肩甲骨が浮動している、いわゆる「鎖骨がない」状態であるため、非常に柔軟な動きが可能です。この構造により、狭い隙間を通り抜けたり、高い場所に飛び上がったりすることが容易になっています。さらに、猫のひげ(「ビブラッサ」)は、周囲の状況を感知するセンサーとしての役割を果たし、暗い場所や狭い通路でも安全に移動することができます。

 

研究結果から見えてくる猫の世界

この研究を通して、猫が狭い通路をどのように通り抜けるのか、その背景にある体の柔軟性や環境適応能力、そして高度な認知能力が明らかになりました。猫の行動は、長年の進化の中で培われた能力の賜物であり、私たちが何気なく見ている猫の仕草一つ一つに、実は科学的な根拠が隠されているようです。

 

参考文献:

Pongrácz P. Cats are (almost) liquid!-Cats selectively rely on body size awareness when negotiating short openings. iScience. 2024;27(10):110799. Published 2024 Sep 17. doi:10.1016/j.isci.2024.110799