運動は毎日やればそりゃあ効果があるだろうなというのはなんとなくわかるのですが、運動習慣のない人間が知りたいのは、『効果の出る最低限の運動量』ですよね?
そう思う方にとって朗報になるかも知れません。最近の研究では、たとえ週に30分程度でも、コツコツと継続することで体重やウエスト周囲径(腹囲)が減り、体脂肪率までも下げられる可能性が示されています。実際、116のランダム化臨床試験をまとめたメタ解析によると、計6880人(平均46歳、うち61%が女性)を対象に、少なくとも8週間以上の有酸素運動を行ってもらい、その結果を分析したところ、週あたりの運動時間が30分増えるごとに体重は約0.52kg、ウエスト周囲径は約0.56cm、体脂肪率は0.37%ほど減少するという数値が示されました。さらに内臓脂肪では平均1.60cm²、皮下脂肪では1.37cm²という減り幅が見られたとのことです。
週150分以上の中等度から高強度の有酸素運動に取り組んだ場合は、体重や腹囲に「臨床的に意味のある」変化が見込まれるとも報告されています。たとえば、1日40~60分を週5日程度行う計算になる「週300分」ほどの運動量で、体重は最大4kg前後、ウエストなら約5cmの減少が期待されるというデータです。もっとも、いきなり毎日長時間の運動を続けるのはハードルが高いかもしれません。まずは1日20~30分を目指し、慣れてきたら徐々に増やしてみるといった方法も良さそうです。
また、週8~12週間のように短期間集中的に運動を続けると、やや効果が高くなるという傾向がある一方、半年以上の長期になると一時期ほどの変化が得にくいケースもありました。逆に言えば、短期集中と長期継続をうまく組み合わせてモチベーションを保つのが大切だと考えられます。
さらに注目されるのが、有酸素運動を行うと気分が前向きになり、日常生活でも疲れにくくなるなど、生活の質(QOL)の改善に寄与する可能性があることです。食生活や喫煙習慣なども合わせて見直すと、より効果的とも考えられます。ただし、ウォーキングやジョギングなどは膝・足首などに負担がかかるため、関節や筋肉の違和感を覚えた場合には休息をとったり、運動方法を変更したりするなど、無理のない範囲で取り組むのが望ましいでしょう。
まとめると、「週あたり30分の運動でも効果はある」「150分以上でさらに顕著」「300分ほどなら大きな変化に近づく」という指標が見えてきます。何よりも大切なのは、少しずつでも継続して運動量を積み重ねることです。たった30分のウォーキングからでも、思わぬ好影響が期待できるかもしれません。忙しい日々の中でも、まずは“最低限の運動量”を意識して、新しい一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
参考文献:
Jayedi A, Soltani S, Emadi A, Zargar M, Najafi A. Aerobic Exercise and Weight Loss in Adults: A Systematic Review and Dose-Response Meta-Analysis. JAMA Netw Open. 2024;7(12):e2452185. doi:10.1001/jamanetworkopen.2024.52185
