私たちは皆、日々の生活の中でストレスを感じることがあります。
仕事でプレッシャーを感じたり、人間関係で悩んだり、健康面で不安を抱えたりと、ストレスの原因はさまざまです。
しかし、ストレスが私たちの記憶にどのような影響を与えるかについては、あまり深く考えたことがないかもしれません。
スイスのチューリッヒ大学病院の研究チームは、ストレスが自己効力感の記憶に与える影響について調査を行いました。
自己効力感とは、「自分は何かを成し遂げることができる」という感覚のことです。
この研究では、54名の大学生を対象に実験を行いました。
1週間にわたり、毎日デジタルトレーニングを実施し、過去の成功体験や困難を克服した経験を思い出すように指示されました。
そして、その過程で感じるストレスレベル、記憶の鮮明さ、そして想起のしやすさを評価しました。
その結果、ストレスを感じているときには、自己効力感に関連する記憶を思い出すのが難しくなり、記憶も曖昧になることがわかりました。
ストレスが高いときには、過去の出来事を思い出すのが難しくなり、記憶も曖昧になる傾向がありました。
一方で、リラックスしているときには、回想がより容易であり、記憶も鮮明に感じられることがわかりました。
興味深い点として、この「回想の難易度」や「記憶の鮮明さ」は、自己効力感の向上に直接的な影響を与えないことも明らかになりました。
つまり、ストレスを感じているときに記憶を思い出すのが難しい場合でも、その行為自体が自己効力感を高めることに貢献しているのです。
結果まとめ
- ストレスを感じていると、自己効力感に関連する記憶を思い出すのが難しくなり、記憶の鮮明さも低下する。
- リラックスしているときは、回想が容易であり、記憶も鮮明になる。
- 回想の難易度や記憶の鮮明さは、最終的な自己効力感の向上に有意な影響を与えない。
- ストレスの初期段階で介入することが効果的であり、リラクゼーションを組み合わせることでさらなる効果が期待できる。
この研究は、私たちの日常生活においても応用可能な示唆を提供しています。
ストレスを感じている中で過去の成功体験を思い出すことは確かに難しいかもしれませんが、それでもその行為には価値があります。
そして、リラクゼーションを取り入れることで、その効果をさらに高めることが可能です。
これからは、リラックスする時間を意識的に取り入れながら、自分が達成してきたことを振り返る時間を作ってみてはいかがでしょうか。
それが心の健康を支え、未来の自分をさらに強くする助けとなるはずです。
参考文献:
Rohde, J., Meine, L.E., Brown, A.D. et al. The impact of momentary stress on autobiographical memory recall in a self-efficacy intervention. Sci Rep 14, 29864 (2024). https://doi.org/10.1038/s41598-024-80896-z
