健康診断で血圧が高いと指摘された経験はありますか?
実は、高血圧は心臓病や脳卒中だけでなく、腎臓病のリスクも高めることが知られています。
最近の研究では、一時的な高血圧だけでなく、長年の血圧の積み重ねが腎臓病の発症リスクに影響することが明らかになってきました。
研究の背景と方法
韓国で行われた大規模な調査では、5,221人の健康な成人を6年間追跡し、血圧の推移と腎臓病の発症の関係を調べました。
この調査では、上の血圧(収縮期血圧)と下の血圧(拡張期血圧)が、正常値(120/80 mmHg)を超えた状態が続いた場合の影響を分析し、参加者をその程度に基づいて4つのグループに分けました。
研究結果
その結果、高血圧の状態が長く続けば続くほど、腎臓病になるリスクが高くなることが分かりました。具体的には、以下の通りです:
- 上の血圧が高い状態が長く続いたグループ(グループ2および3)では、腎臓病になるリスクがそれぞれ1.94倍および1.89倍に増加しました。
- 下の血圧が高い状態が長く続いたグループでも、腎臓病になるリスクがそれぞれ1.42倍および1.54倍に増加しました。
- さらに、これらのリスクは、降圧薬を服用していない人や、これまで高血圧と診断されたことがない人でも同様に確認されました。
血圧の積み重ねとは?
この「血圧の積み重ね」とは、過去の血圧の高さ、そして高血圧の状態が続いた期間の両方を考慮した指標です。
例えば、平均血圧が136 mmHgの人を例に挙げると、血圧の変動が大きい人の方が、血圧の積み重ねが大きくなります。
また、高血圧の期間が同じ0%でも、血圧の積み重ねは異なる可能性があります。
この研究では、上の血圧と下の血圧の両方が腎臓病の発症に影響することが示されました。
特に、上の血圧が高い状態が長く続いたグループでは、腎臓病になるリスクが約2倍になることが分かりました。
なぜこの結果が重要なのか?
多くの人は、自分が高血圧と診断されない限り、血圧に注意を払わないかもしれません。
しかし、今回の研究は、「健康」とされる血圧の範囲内であっても、長年の血圧の積み重ねが腎臓病のリスクを高める可能性を示しています。
つまり、若い頃から血圧に気を配り、高血圧の状態をできるだけ長く続けないことが重要です。
健康診断で血圧が高いと指摘されたら、放置せずに医療機関を受診し、医師の指導を受けることが大切です。
また、日頃から塩分を控えめにし、適度な運動をし、ストレスを溜めないようにするなど、生活習慣を改善することも腎臓病の予防に有効です。
まとめ
- 長期的な高血圧(累積血圧負荷)は腎臓病のリスクを増加させる。
- 高血圧と診断されていなくても、このリスクは存在する。
- 若い頃から血圧管理を行うことが、将来の腎臓病予防に役立つ。
血圧は単なる数字ではなく、全身の健康状態を反映する重要な指標です。
この機会に、ご自身の血圧管理について、改めて考えてみてはいかがでしょうか。
参考文献:
Park HS, Park SH, Seong Y, Kim HJ, Choi HY, Park HC, Jhee JH. Cumulative Blood Pressure Load and Incident CKD. Am J Kidney Dis. 2024 Dec;84(6):675-685.e1. doi: 10.1053/j.ajkd.2024.05.015. Epub 2024 Jul 30. PMID: 39084487.
