女性3万人の調査で判明―食事で変わる大腸憩室炎リスクの真実

女性3万人の調査で判明―食事で変わる大腸憩室炎リスクの真実

 

紹介した論文の音声概要を、NotebookLMでポッドキャスト化しています。あわせてお楽しみください。

 

「大腸憩室炎」という病気があります。

これは大腸の壁が外側に飛び出して袋状になった「憩室」に炎症が起きる病気で、腹痛や発熱、便秘、下痢などの症状を伴い、右側や左下の腹部に痛みが出ることが多いです。

特に女性に多く、一生のうちに約5%の女性が経験するとされています(男性では約3.1%)。

一度発症すると再発率は約22%にもなるため、多くの方が食生活に注意を払います。

 

これまで、憩室炎の予防には「ナッツや種(ゴマ、ひまわりの種、カボチャの種、亜麻仁、チアシードなど)、トウモロコシなどの粒状食品を避けるべきだ」と言われてきました。

これらが腸の壁に引っかかり炎症を引き起こすとの考え方が広まっていたのです。

しかし最近の研究によって、この通説は覆される可能性が出てきました。

 

アメリカとプエルトリコ在住の約3万人の女性を対象にした大規模な研究が行われました。

この研究では、ナッツや種の摂取量が多い人と少ない人を比較したところ、憩室炎のリスクに明確な差は認められませんでした。

さらに特筆すべきことに、トウモロコシをよく摂取する人ではむしろ憩室炎のリスクが14%ほど低下していることがわかったのです。

 

また、この研究では健康的な食生活パターンについても詳しく検討しています。

果物や野菜、全粒穀物、ナッツ類を積極的に取り入れ、赤身肉や加工肉を控える「DASH食」を実践している人は、憩室炎のリスクが23%も低下しました。

同様に、米国農務省が推奨するバランスの良い食事指標「HEI」、慢性疾患の予防を目的に作られた食事指標「aHEI」、そして魚介類や野菜、果物、ナッツ類などを中心とした「地中海式食事(aMed)」という健康的な食事パターンでも、それぞれ憩室炎のリスクが約20%減少しました。

 

これらの結果は、ナッツや種を避ける必要はなく、むしろ全体としてバランスの取れた健康的な食事が憩室炎の予防に重要であることを示しています。

研究では、健康的な食事が腸内の慢性炎症を抑え、腸内細菌のバランスを整えることで憩室炎を予防する可能性も指摘しています。

 

具体的なアドバイスとしては、毎日の食事に果物や野菜、全粒穀物を積極的に取り入れ、赤肉や加工食品の摂取を控えることが効果的です。

特定の食品を恐れるのではなく、健康的で多様な食品をバランスよく楽しむことが、憩室炎をはじめとした病気予防に繋がるでしょう。

 

参考文献:

Barlowe T, Anderson C, Nichols HB, et al. Diet and Risk for Incident Diverticulitis in Women : A Prospective Cohort Study. Ann Intern Med. Published online May 6, 2025. doi:10.7326/ANNALS-24-03353