心で森林浴:自然の癒しを再現する想像の力

心で森林浴:自然の癒しを再現する想像の力

 

 

毎日の忙しい生活で疲れが溜まったとき、多くの人は自然の風景に癒しを求めます。

実際に森や川を訪れるだけでなく、自然の写真や動画を見るだけでもストレスが軽減されると感じる人も多いでしょう。

最近では、この「自然の癒し」の効果がさらに深く、心の中で自然を想像するだけでも得られることが明らかになりました。

 

フィンランドとノルウェーの研究チームは、ストレスを与えた50人の学生に、自然に関連した言葉(「森林」「湖」「鳥のさえずり」など)と都市に関連した言葉(「アスファルト」「バス停」「ショッピングモール」など)をそれぞれ5分間想像してもらいました。

その後、参加者の主観的なリラックス感、生理的な反応(心拍数や心拍変動、皮膚電気活動)を調査しました。

 

結果として、自然をイメージした後の参加者は、都市のイメージをした後よりも主観的にリラックス感が高まり、実際に心拍数が低下し、心拍変動が増加するなど、生理的にもリラックス状態を示していました。

ところが興味深いことに、皮膚電気活動(感情の興奮や興味を示す指標)は自然を想像したときの方が高かったのです。

これはストレスではなく、参加者が自然を明らかに好んでいたため、ポジティブな興奮や好奇心が高まったためと考えられています。

 

また、この効果を詳細に分析すると、自然を好む個人の特性が大きく影響していることも判明しました。

普段から自然とのつながりを感じている人ほど、自然をイメージした際のリラックス効果が強かったのです。

 

つまり、心の中で自然を想像するだけで得られるリラックス効果の多くは、私たちが自然を好きだという心理的な要素に支えられています。

これは、私たちの「心(トップダウン処理)」が体に与える影響を示すもので、実際に自然に触れる機会がなくても、好きな自然を頭の中で描くだけで十分なリラックス効果が期待できるのです。

 

忙しい毎日の合間に、ほんの少し目を閉じて、川のせせらぎや森の静かな小道を想像してみてはいかがでしょうか。

私自身、疲れたときにはスマホのアプリで焚火の音や川の流れる音を流して目を閉じてみます。

すると、不思議と緊張がほぐれ、気持ちが落ち着いてくるのを感じます。

手軽で費用もかからないこの方法、ぜひ試してみてはいかがでしょうか。

 

参考文献:

Koivisto M, Grassini S. The restorative effects of mental imagery of nature: a study on subjective and physiological responses. J Environ Psychol. 2024;96:102346. doi:10.1016/j.jenvp.2024.102346