音楽を聴いて元気が出たり、時には涙が止まらなくなったりといった経験をしたことがあるかもしれません。
音楽には私たちの心に直接響く特別な力がありますが、心の病気である「うつ病」にも効果があるのでしょうか。
特に、男性よりも女性のほうが約2倍うつ病になりやすいことが知られています。
ドイツのハイデルベルク大学の研究チームは、この女性たちを対象に「グループ音楽療法(GMT)」の効果を詳しく調べました。
この研究では18歳から65歳までのうつ病と診断された女性102名が参加しました。
参加者はランダムに2つのグループに分けられ、一方のグループは通常の治療に加えて週1回120分、10週間にわたりGMTを受けました。
もう一方は通常の治療のみを受けました。
音楽療法の内容は、楽器を自由に演奏したり歌ったりする「能動的な方法」と、音楽を聴いてリラックスしたりイメージを膨らませたりする「受容的な方法」の組み合わせでした。
専門の音楽療法士が参加者の状態に合わせて進めていきました。
研究チームは、専門家による評価、自分自身の評価、さらに日常生活の中でリアルタイムに気分を記録する方法(EMA)を用いて効果を測定しました。
その結果、GMTを受けたグループは特にEMA評価で日常の気分の落ち込みが明らかに改善しました。
一方で、専門家の評価や自己評価アンケートでは統計的に明確な差が出ませんでした。
さらに、治療終了後10週間後の追跡調査では、改善効果は持続していませんでした。
音楽はその瞬間瞬間に響く刹那の芸術であり、心に深く影響を与える一方で、後々まで持続しにくいという特性があります。
そのため、継続的な取り組みが重要であることが示されました。
また、GMTグループでは感情の調整が上手になり、音楽を利用して気分を切り替えたり慰めを得たりする能力が高まりました。
さらに、全般的な健康状態など生活の質の向上も確認されました。
今回の研究結果から、グループ音楽療法が日々の気分の改善や感情調節、生活の質向上に役立つ可能性が明らかになりました。
音楽が持つ、人の心を支える優しい力が、うつ病の治療をサポートする一つの手段として、今後さらに研究されることが期待されます。
参考文献:
Gaebel C, Stoffel M, Aguilar-Raab C, et al. Effects of group music therapy on depressive symptoms in women – The MUSED-study: Results from a randomized-controlled trial. J Affect Disord. 2025;374:1-10. doi:10.1016/j.jad.2025.01.011
