認知症 ― 誰もが気になるテーマだと思います。
予防できれば何よりですが、日常で服用している「身近な薬」が、実は認知症のリスクを減らす可能性がある、という興味深い研究結果が報告されました。
研究チームは、アメリカの65歳以上の人々約5万人のデータを10年間追跡調査し、普段から服用している薬と認知症発症との関連を調べました。
対象となった薬のカテゴリーは以下の3つです。
– 糖尿病治療薬(メトホルミン、GLP-1受容体作動薬)
– 抗うつ薬(SSRI、SNRI)
– 脂質異常症治療薬(スタチン)
その結果、特に糖尿病薬と抗うつ薬は、認知症のリスクを有意に減少させる可能性が示されました。
具体的には、GLP-1受容体作動薬は認知症リスクを約31%低下させ、メトホルミンでも約10%の低下が見られました。
抗うつ薬でも、SSRIが約14%、SNRIが約16%のリスク低下と報告されています。
一方、スタチンに関しては明らかな効果は認められませんでした。
ではなぜ、これらの薬が認知症リスクを下げるのでしょうか?
研究者たちによると、糖尿病薬は脳の炎症を抑えたり、インスリン抵抗性を改善したりする効果があり、それが脳の神経細胞の健康を維持すると考えられています。
また、抗うつ薬は、脳内で神経細胞の保護や新しい神経細胞の生成を促進する可能性があると言われています。
とはいえ、予防目的でこれらの薬を自己判断で服用するのはもちろん厳禁です。
この研究結果は、あくまで観察研究であり、直接的な因果関係を証明するものではありません。
しかし、既にこれらの薬を服用している人にとっては、「思いがけない副産物」として認知症予防の効果が期待できるかもしれません。
どちらかというと、これらの治療をしている人々に対して、今の治療を信じて、地道に続けていきましょうというメッセージになるかと思います。
参考文献:
Underwood BR, Lourida I, Gong J, et al. Data-driven discovery of associations between prescribed drugs and dementia risk: A systematic review. Alzheimers Dement (N Y). 2025;11(1):e70037. Published 2025 Jan 21. doi:10.1002/trc2.70037
