近年、海洋汚染の問題が注目されていますが、みなさんは「海氷」がマイクロプラスチックを運んでいることをご存知でしょうか?
意外に思われるかもしれませんが、海氷はただ冷たく静かな存在ではなく、汚染物質を含む複雑な「運び屋」としての役割を果たしています。
今回の研究では、オホーツク海の端に位置する知床半島に漂着した海氷に含まれるマイクロプラスチック(MP)の実態が詳しく調査されました。

2023年2月、知床半島近くで採取された海氷から、4本の氷コアが分析されました。
この氷コアは上層、中層、下層に分けて解析され、内部に含まれるマイクロプラスチックの量や種類、形状などが調べられました。
その結果、9種類のプラスチックが検出されました。
特に多かったのは、アルキド、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ゴムでした。
さらに、興味深いことに、マイクロプラスチックの濃度は0から60粒子/Lとばらつきがあり、平均すると21粒子/Lの濃度で存在していました。
中でも、下層部分での濃度が特に高く、これは海氷が成長する際に表面の汚染物質を取り込んだためと考えられます。
つまり、知床半島に漂着する海氷は、一時的に海洋汚染物質を閉じ込める役割を果たしているのです。
調査では、検出されたマイクロプラスチックの約89%が「断片状」であり、大部分が120μm以下の小さなサイズでした。
一方、繊維状のマイクロプラスチックはすべて210μm以上と比較的大きく、PETとポリアミド(PA)から構成されていました。
この違いは、プラスチックの物理的特性や氷の中での移動の仕方に関係していると考えられます。
今回の研究は、知床半島近くの海氷がマイクロプラスチックの「一時的な貯蔵庫」であること、そしてその溶ける過程で二次的な汚染源になる可能性があることを示唆しています。
このことは、海洋汚染が地球全体のどこにでも存在し、私たちの目に見えない形で広がっている現実を物語っています。
主な研究結果
- 海氷はマイクロプラスチックを一時的に貯蔵し、その後放出する役割を果たしている可能性がある。
- マイクロプラスチックは主に断片状で、120μm以下のものが多く含まれている。
- 下層部分でマイクロプラスチックの濃度が高い傾向があり、これは表面の汚染を反映していると考えられる。
私たちが目にすることのない場所でも、マイクロプラスチックは環境を巡り続けています。
この事実は、私たちの生活がどれほど自然環境に影響を与えているかを改めて考えさせてくれます。
小さな行動の積み重ねが、海や地球全体の健康にとって大きな影響を与えるかもしれませんね。
参考文献:
Ohno, H., Iizuka, Y. Microplastics in sea ice drifted to the Shiretoko Peninsula, the southern end of the Sea of Okhotsk. Sci Rep 14, 29415 (2024). https://doi.org/10.1038/s41598-024-78108-9
