暑さと薬がもたらす体温上昇のリスク

暑さと薬がもたらす体温上昇のリスク

 

やっと少しずつ秋の気配が感じられる時期になりましたが、日によっては熱中症の危険を感じる時もありますし、まだ油断はできません。

最近のような季節の変わり目には、どうしても体温調節が追いついていない印象があります。

加えて、日ごろ飲んでいる薬にも、体温調節に影響を与えるものがあるので注意が必要です。

今回は、特定の薬が暑さによる体温上昇を引き起こす可能性があるという研究をご紹介します。

 

以前から、世界保健機関(WHO)は、暑い環境下での体温調節に影響を及ぼす可能性がある薬として、いくつかの薬を挙げていました。

例えば、抗コリン薬(アトロピンなど)、βブロッカー(プロプラノロールなど)、アドレナリン、抗パーキンソン病薬などです。

実際はどうなのか、このリストに基づいて、オーストラリアのシドニー大学などの研究チームが、それぞれの薬が体温にどう影響を与えるかを系統的に調査しました。

 

この研究では、暑熱ストレス(気温30°C以上の環境や運動など)にさらされた成人を対象に、特定の薬剤が体温に及ぼす影響を調べた35件の研究データが分析されました。

主な結果は次の通りです。

  

抗コリン薬(アトロピンなど):平均+0.42°Cの体温上昇が確認され、特に発汗量が減少することで体温が上がりやすいことがわかりました。

非選択的βブロッカー(プロプラノロールなど):体温が平均+0.11°C上昇。運動中の体温調節が難しくなることが指摘されています。

アドレナリン:体温が+0.41°C上昇し、身体が自らの熱を処理する能力が低下する可能性があります。

抗パーキンソン病薬:体温が+0.13°C上昇することが確認されました。

 

一方、抗うつ薬や利尿薬などについては、暑熱ストレスの影響を受けにくいことが示されています。

 

注意しなければならないのは、対象となった研究の多くが健康な若年男性を対象に行われていて、高齢者や慢性疾患を持つ人々における影響はまだ十分に調べられていないことです。

また、短期間の暑熱環境での影響を見たものが多く、長期的な影響は未知数です。

特に日本のように高齢者の割合が高い国では、こうした薬の暑さへの影響を知ることは重要です。

  

もし自分や家族が上記の薬を服用している場合、暑い日や屋外活動が増える時期には、以下の点に注意した方が良いですね。

 

水分補給:暑さによって体温が上がりやすい薬を服用している場合、こまめな水分補給が大切です。

涼しい環境を確保:暑い日には無理をせず、冷房のある場所や日陰で過ごすようにしましょう。

医師への相談:長期間の服用が必要な薬については、暑い日や旅行など特別な環境における注意点を医師と確認するのも一案です。

 

私たちが日頃飲んでいる薬が、思わぬ形で体温調節に影響を与えることがあります。

特に暑さが増す季節、少しの知識と工夫で健康を守ることができるかもしれません。

 

参考文献:

Hospers L, Dillon GA, McLachlan AJ, et al. The effect of prescription and over-the-counter medications on core temperature in adults during heat stress: a systematic review and meta-analysis. eClinicalMedicine. 2024;77:102886. doi:10.1016/j.eclinm.2024.102886