情報が溢れる現代社会で、私たちは繰り返し目にする情報に影響されやすいという現象が知られています。
たとえそれが最初に見聞きしたときに疑わしいと感じた情報であっても、繰り返し接触することで、「これって本当かも?」と思い込んでしまうことがあるのです。
この現象は「真理の錯誤効果(イリュージョン・トゥルース効果)」と呼ばれ、特に気候変動のようなデリケートな問題に関連する情報では、その影響が無視できないレベルにまで達しています。
最近の研究によると、気候変動を支持する立場の人々(気候科学支持者)でさえも、懐疑的な主張を繰り返し目にすると、その主張を信じやすくなってしまうことが確認されました。
この研究では、100名以上のアメリカ人を対象に、気候変動に対する科学的な主張と、気候変動を懐疑的に見る主張を提示しました。
その後、参加者に対してその主張の真偽を評価させましたが、驚くべきことに、一度だけ提示された主張に比べて、繰り返し見聞きした主張は信ぴょう性が高いと評価される傾向が顕著に見られたのでした。
この研究は2つの実験から構成されています。
第1の実験では、100名の参加者が、気候科学の主張と懐疑的な主張の両方にさらされ、その後に真実性を評価しました。
15分の休憩を挟んだ後、参加者は再度これらの主張の真偽を評価しました。
結果、気候科学に賛成する主張はもちろん高い信頼を得ましたが、同時に気候懐疑派の主張も、繰り返し触れることで信頼度が増すことが明らかになりました。
第2の実験では、同様の方法で200名の参加者を対象に調査を行い、さらに詳細なデータが収集されました。
この実験でも同様に、繰り返し触れることで信ぴょう性が増す現象が確認されました。
具体的な数値を挙げると、繰り返し触れた主張に対する信ぴょう性は、通常より20%ほど上昇する結果となっていました。
この結果は、特に今の世の中に非常に重要な意味を持ちます。
なぜなら、SNSやニュースメディアでは、真偽が不確かな情報が何度も繰り返し目にされることが多いからです。
その結果、どんなに科学的に誤りであっても、何度も見聞きすることで無意識のうちに「本当なのかも」と思ってしまう可能性が高まります。
しかし、この「真理の錯誤効果」は、逆手に取ることもできます。
正しい情報を意識的に何度も伝えることで、人々の信ぴょう性評価を高めることができるのです。
たとえ科学的な事実を知っている人々であっても、その情報を繰り返し確認することで、より深い理解が得られ、その結果として、正確な情報が社会全体で浸透していくことになります。
この研究結果から得られる教訓は明らかです。
私たちは、どの情報が信頼に足るのかを常に意識し、情報の真偽を自ら判断する力を養うことが重要です。
また、正しい情報を広める際には、その繰り返しが非常に有効であることを念頭に置くべきです。
情報が乱立する時代だからこそ、私たちは情報の背後にある事実と、それがどれだけ信頼できるかを見極める力を持つ必要があります。
参考文献:
Jiang Y, Schwarz N, Reynolds KJ, Newman EJ. Repetition increases belief in climate-skeptical claims, even for climate science endorsers. PLoS One. 2024;19(8):e0307294. Published 2024 Aug 7. doi:10.1371/journal.pone.0307294

