アルツハイマー病は、多くの人々にとって恐れられる疾患です。
認知機能を徐々に失わせ、日常生活さえ困難にするこの病いは、長い年月をかけて進行していきます。
特に治療法が確立されていないため、早期発見が重要な鍵となります。
しかし、最近の研究よると、この病気は症状が出るはるか前から体内で静かに進行している可能性が示されました。
研究者たちは、20年以上にわたってアルツハイマー病に関連するバイオマーカーを追跡しました。
バイオマーカーとは、体の状態や病気の進行を示す指標のことです。
たとえば、アミロイドβ42というタンパク質はアルツハイマー病の初期段階で脳に蓄積しやすく、脳脊髄液中のレベルが18年前にすでに減少し始めていることが分かりました。

この図が示す通り、アミロイドβ42の異常が最も早く現れ、その後タウタンパク質や神経フィラメントの異常が続いています。
このデータは、アルツハイマー病が見た目よりもずっと早くから進行していることを如実に示しているのです。
この発見は、従来の認識を大きく覆すものです。
また、記憶に関わる脳の一部である海馬が、症状の8年前から縮小し始めているというデータも得られました。
これらの変化は、まだ日常生活に支障が出ていない段階で起こっており、患者自身が気づくことは難しいとされています。
この研究が示唆するのは、体液検査などの方法を用いて、病気のリスクを早期に特定できる可能性があるということです。
つまり、症状が出るずっと前に対策を講じることが可能かもしれません。
これは、患者や家族にとって大きな希望となるでしょう。
この発見は、アルツハイマー病の進行に対する私たちの理解を深めるだけでなく、今後の研究や治療の方向性にも大きな影響を与えるものだと思います。
早期診断の技術が発展すれば、この病気の影響を最小限に抑える未来も、決して夢物語ではないかもしれません。
この研究の結果まとめ
– アミロイドβ42の濃度低下:発症の約18年前から減少が始まる。
– アミロイドβ42/40比の変化:発症の約14年前から異常が見られる。
– タウタンパク質(p-tau 181)の増加:発症の約11年前から濃度が上昇。
– 全タウタンパク質(t-tau)の増加:発症の約10年前から異常が観察される。
– 神経フィラメント軽鎖(NfL)の増加:発症の約9年前から上昇が始まる。
– 海馬の容積減少:発症の約8年前から減少が確認される。
– 認知機能の低下(CDR-SBスコア):発症の約6年前から明確な認知機能低下が進行する。
参考文献:
Jia J, Ning Y, Chen M, et al. Biomarker Changes during 20 Years Preceding Alzheimer’s Disease. N Engl J Med. 2024;390(8):712-722. doi:10.1056/NEJMoa2310168

