腎臓内科医である私には畑違いのお話ではあるのですが、内科他分野の進歩については、やはり知っておく必要があります。
透析の患者さんを紹介するとき、相手先でどんな治療を受けるのかを知っていなければならないというのもありますが、やはり、内科全般について常に学んでおきたいからです。
今日は、循環器内科のお話です。
心臓病の治療法の一つに「経皮的冠動脈インターベンション(PCI)」があります。
これは、冠動脈が狭くなったり詰まったりすることで引き起こされる心疾患に対する治療法です。
治療の進歩により、患者の予後は大幅に改善されてきましたが、その技術の進化は、単なる手術法の改善にとどまりません。
PCIは、1970年代に最初に行われて以来、さまざまな技術革新が続けられてきました。
特に、血管に金属のメッシュ状のステントを挿入する技術が重要な役割を果たしています。
当初のステントは、いわゆる「ベアメタルステント」と呼ばれるもので、血管が再度狭くなる「再狭窄」の問題がありました。
しかし、薬剤をコーティングした「薬剤溶出ステント(DES)」の登場により、そのリスクは大幅に軽減されました。
これで、1年後の再狭窄率はわずか5%程度にまで減少しましたが、さらに技術が進歩し、現在ではより薄いストラット(ステントの骨組み)が使用されるようになり、患者への負担も軽減されています。
また、慢性完全閉塞(CTO)と呼ばれる、冠動脈が完全に詰まった状態の治療も劇的に進化しました。
CTOの治療は長年、技術的に非常に困難であるとされてきましたが、専用のガイドワイヤーや最新のカテーテル技術を駆使することで、成功率は80〜90%に達しています。
もっとも、この治療の効果が臨床的にどれだけ有益かについては、まだ議論の余地があり、今後の研究が期待されています。
特に、PCIの技術進歩によって、従来の大腿動脈アプローチに代わり、腕の橈骨動脈を使用する「橈骨アプローチ」が主流となっています。
最近では、さらに進化した「遠位橈骨アプローチ」が導入されており、この方法により術後の止血時間が短くなるだけでなく、手術後の合併症リスクも低く抑えることが可能となっています。
PCIの技術革新は、分岐病変(血管が分岐している部分の病変)にも大きな影響を与えています。
分岐病変の治療は特に難しく、従来は1本のステントを使用することが主流でしたが、複雑なケースでは2本のステントを使用することが効果的な場合もあります。
これで複雑な病変に対する治療が可能となり、患者の予後がさらに改善されています。
まとめ
– 遠位橈骨アプローチは、術後の出血リスクを減らし、止血時間も短縮されるなど、多くのメリットがある。
– CTO治療は、技術の進化により成功率が80〜90%に達しているが、その臨床的な利益については今後の研究が必要。
– 分岐病変の治療では、1ステント戦略が基本だが、複雑な病変に対しては2ステント技術も導入されている。
技術の進歩は、単に成功率を上げるだけでなく、患者にとってより快適で安全な治療を実現しています。
参考文献:
Saito Y, Kobayashi Y. Advances in Technology and Technique in Percutaneous Coronary Intervention: A Clinical Review. Intern Med. Published online September 27, 2024. doi:10.2169/internalmedicine.4505-24

