「酒は百薬の長」の雲行きがあやしいらしい

「酒は百薬の長」の雲行きがあやしいらしい

 

昔から「酒は百薬の長」とは、よく言われている言葉ですね。

飲み方を間違わずに適量であれば、お酒は体に良いという意味です。

しかし、本当に少量のアルコールは健康に良いのでしょうか?

特に赤ワインが心臓に良いという俗説も広く信じられています。

この問いに答えるために、最近の研究を見てみましょう。

 

カナダのビクトリア大学の研究チームが行った系統的レビューとメタアナリシスによると、低用量のアルコール摂取と健康リスクについての理解にはまだ多くの誤解があることがわかりました。

この研究では、アルコール消費と全死因死亡率の関連を報告する107の縦断研究を分析し、対象者は4,838,825人、死亡者数は425,564人という大規模なデータを用いています。

研究では、低用量の飲酒が本当に健康に良いのかを検証するため、質の高い研究と低い研究に分類しました。

質の高い研究では、平均コホート年齢が55歳以下で、禁酒者のリファレンスグループから元飲酒者と時々飲む人を除外しました。

 

その結果、低用量飲酒者(週に1杯から1日2杯、1.30〜25gのエタノール/日)の死亡リスクは禁酒者とほぼ同じであることが判明しました(相対リスクRR = 0.98, 95% CI [0.87, 1.11])。

一方、質の低い研究では、低用量飲酒者の死亡リスクが有意に低いと見積もられました(RR = 0.84, 95% CI [0.79, 0.89])。

さらに、探査的分析では、喫煙や社会経済的地位を調整すると、低用量飲酒者の死亡リスクが有意に減少することが示されました。

しかし、喫煙者でないコホートの平均RRは1.16(95% CI [0.91, 1.41])と、むしろ死亡リスクが高まる傾向も見られました。

 

これらの結果は、低用量の飲酒が健康に良いという考えが必ずしも正しいわけではないことを示しています。

特に、研究の質や選択バイアスが結果に大きな影響を与える可能性があるため、低用量の飲酒が健康に及ぼす影響については慎重に評価する必要があります。

また、赤ワインが心臓に良いという俗説についても再考が必要です。

この研究では、アルコールと心臓病の関連についても触れていますが、質の高い研究ではその健康効果が見られないことが多いのです。

むしろ、誤った選択バイアスや研究の質が低いことが、赤ワインが心臓に良いとされる根拠の一部になっている可能性があります。

つまり、「酒は百薬の長」というのは、ちょっと違うんじゃない?という結論でした。

お酒好きには、あまり耳に入れたくないお話だったかも知れません。

 

参考文献:

Stockwell T, Zhao J, Clay J, Levesque C, Sanger N, Sherk A, Naimi T. Why Do Only Some Cohort Studies Find Health Benefits From Low-Volume Alcohol Use? A Systematic Review and Meta-Analysis of Study Characteristics That May Bias Mortality Risk Estimates. J Stud Alcohol Drugs. 2024;85(4):441-452. doi:10.15288/jsad.23-00283.