楽器の演奏は脳を強化する

 

私は「楽器を演奏することは高齢者の脳にきっと良いはずだ」と思っている派です。

例えば、クラシック界ではパブロ・カザルスやアルトゥーロ・トスカニーニ、最近お亡くなりになった小澤征爾さんも晩年まで精力的に活動を続け、音楽界に大きな影響を与えました。

ロック界ではミック・ジャガーやポール・マッカートニー。80歳を過ぎてもライブツアーをするなんて、まさに鉄人としか言いようがありません。

ポップス界ではトニー・ベネットやティナ・ターナーがいます。彼らも高齢になっても素晴らしいパフォーマンスを続けてきました。

今までも楽器を演奏することが脳に良い影響を与えるという研究結果が発表されてきましたが、今回、特に高齢者を対象にした新たな研究が報告されました。この研究は、音楽活動が脳の機能的結びつき、つまり脳の異なる部分同士がどれだけうまく連携して働くかを調査したものです。

研究には130名の参加者が含まれ、そのうち65名は若い頃から楽器を演奏してきた人たちで、もう65名は楽器を演奏したことがない人たちです。どの楽器を演奏するのかは限定されておらず、ピアノやギターなど様々な楽器が含まれていました。この二つのグループは、年齢や教育レベルなどの特徴が一致するように調整されていました。

研究者たちは、参加者の脳を機能的MRI(fMRI)でスキャンし、脳の異なる部分がどのように連携しているかを調べました。その結果、楽器を演奏してきたグループは、デフォルトモードネットワーク(DMN)という脳のネットワークにおいて、特定の脳領域間の結びつきが強いことが分かりました。特に、前内側前頭皮質(MPFC)と右側の側頭極や前中心回との間で強い結びつきが見られました。これらの領域は、高次認知機能や運動機能に関与しています。

しかし、他の脳のネットワーク、例えばサリエンスネットワーク(SAL)や前頭頭頂ネットワーク(FPN)においては、楽器を演奏してきたグループと演奏していないグループとの間で有意な違いは見られませんでした。このことから、音楽活動が脳全体の機能的結びつきに与える影響は限定的であることが示唆されます。

この研究は、音楽活動が脳の健康にプラスの影響を与える可能性を示しています。特に、楽器を演奏することが脳の特定の領域間の連携を強化し、それが認知機能や運動機能の維持に役立つ可能性があります。しかし、今回の研究は一時点での観察に基づいているため、因果関係を明らかにするためには長期的な観察が必要です。

音楽を楽しむことは生活に潤いを与えてくれます。その上で脳に良い影響があるのなら、それはまた素晴らしいことですね。

 

参考文献:

Liebscher M, Dell’Orco A, Doll-Lee J, et al. Short communication: Lifetime musical activity and resting-state functional connectivity in cognitive networks. PLoS One. 2024;19(5):e0299939. Published 2024 May 2. doi:10.1371/journal.pone.0299939