鉄欠乏症、つまり体内の鉄分が不足する状態は、特に女性にとって重要な健康問題です。
実は、鉄欠乏症の有病率はその定義によって大きく異なります。
これは、どの基準を用いるかで診断される人数が変わるからです。
この点について、米国とカナダの女性を対象にした大規模な調査が行われました。
この調査では、25歳以上の62,685名の女性を対象に、3つの異なる定義を用いて鉄欠乏症の有病率を比較しました。
1. HEIRSの定義 : トランスフェリン飽和度(TS)が10%未満であり、かつ血清フェリチン(SF)が15ng/mL未満の場合に鉄欠乏症と診断されます。この定義は、鉄が体内でどれだけ使われているかと貯蔵されているかを同時に評価するものです。
2. 世界保健機関(WHO)の定義 : 血清フェリチン(SF)が15ng/mL未満の場合に鉄欠乏症と診断されます。これは、体内の鉄貯蔵量が少ないことを示すシンプルな指標として使われます。
3. 鉄欠乏性造血(IDE)の定義 : 血清フェリチン(SF)が25ng/mL未満の場合に鉄欠乏症と診断されます。これは、赤血球を作るための鉄が不足している状態を示します。
それぞれの基準を使うと、以下のような結果となりました。
- HEIRSの定義 : 3.12%
- 世界保健機関(WHO)の定義 : 7.43%
- 鉄欠乏性造血(IDE)の定義 : 15.33%
特に注目すべきは、妊娠を報告した25歳から44歳の女性のデータです。
HEIRSの基準では5.44%、WHOの基準では18.05%、IDEの基準では36.10%が鉄欠乏症と診断されました。
これからわかるように、使用する基準によって診断される人数が大きく変わるのです。
また、この調査では人種や民族間でも有病率に違いがあることがわかりました。
例えば、黒人やヒスパニック系の女性では、アジア系や白人女性よりも高い割合で鉄欠乏症が見られました。
これは、年齢や妊娠の有無、遺伝的な要因が関係していると考えられます。
これらの結果から言えるのは、鉄欠乏症の診断にはどの基準を用いるかが非常に重要であるということです。
そして、高いフェリチンの閾値を使用することで、より多くの女性が診断され、適切な治療を受けることができます。
今回の調査は、鉄欠乏症の実態をより正確に把握すること、適切な医療を提供するための第一歩になるものと思われます。
元論文:
Barton JC, Wiener HW, Barton JC, Acton RT. Prevalence of Iron Deficiency Using 3 Definitions Among Women in the US and Canada. JAMA Netw Open. 2024;7(6):e2413967. Published 2024 Jun 3. doi:10.1001/jamanetworkopen.2024.13967
