悪夢の正体とは何か?
ホラー映画の題材になりそうなテーマですが、その謎に取り組もうとしている研究者グループがあります。
そもそも夢を見る理由もまだ完全に解明されているわけではありませんが、特に悪夢の原因については多くの研究者が頭を悩ませてきました。
そして、悪夢の発生には、私たちの一時的な感情の状態よりも長期的な性格特性が大きく関与していることがわかりました。
悪夢は成人の2.4%から12%に影響を及ぼし、単なる不快な夢にとどまらず、感情的な苦痛やPTSD症状、偏執症、さらには自殺リスクの増加とも関連しています。
以前の研究では、悪夢の頻度と苦痛について、性格特性(長期的な特徴)と一時的な状態(短期的な経験)のどちらがより影響力を持つかが議論されてきましたが、今回の研究はこの点をより明確にすることを目指しました。
研究チームは、エゴ強度や感情調整といった新たな性格特性を含めることで、これまでの研究で見落とされていたかもしれない要因を探りました。
研究に参加したのは166人の大学生で、平均年齢は20.8歳、男女比はほぼ半々です。
参加者には過去2週間にどれだけ悪夢を見たか、どれほど悪夢に悩まされたかを報告してもらいました。
結果、悪夢の頻度は「悪夢の傾向」と「心理的境界」に最も強く関連していることがわかりました。
「悪夢の傾向」とは、悪夢をどれだけ頻繁に見るか、どれだけ強烈か、そしてその影響がどれほど続くかを包括的に評価することを意味しています。
そして、心理的境界があいまいな人ほど、悪夢を見る頻度が高い傾向がありました。
「心理的境界があいまい」というのは、個人の心や感情の区別が明確でない状態を指します。
具体的には、次のようなことです。
1. 内面と外界の区別があいまい:
– 自分の感情や考えと、他人の感情や考えの区別がつきにくい。例えば、他人が感じている不安やストレスを自分のものとして感じ取ってしまう。
2. 夢と現実の境界がぼやける:
– 夢の内容が現実の出来事のように感じられ、目が覚めても夢と現実の違いがはっきりしないことがある。悪夢を見た後、現実の出来事としてその感情を引きずってしまうこともある。
3. 感情のコントロールが難しい:
– 自分の感情が激しく揺れ動きやすく、感情の波に飲み込まれやすい。怒りや悲しみなどの感情が抑えられず、他人との対話や日常生活に影響を及ぼすことがある。
4. 自己と他者の境界があいまい:
– 他人の意見や期待に過剰に影響され、自分の意志や考えが曖昧になる。例えば、友人が悲しんでいると自分も同じように悲しくなり、どこまでが自分の感情で、どこからが他人の影響なのかがわからなくなる。
心理的境界があいまいな人は、外部からの刺激やストレスに敏感であり、その影響を強く受けやすいです。
これにより、悪夢の頻度が高くなりやすく、夢の内容も現実と混同しやすいという特徴があります。
一方、悪夢による苦痛は「低エゴ強度」と「高感情調整障害」と強く関連していることが示されました。
つまり、ストレスに対処する力が弱く、感情をコントロールするのが苦手な人ほど、悪夢による苦痛が大きいということです。
研究者の一人、リアム・ケリー氏は、「悪夢の原因は個人の心の構造や反応の仕方に関係しているようだ」と述べています。
悪夢を見ること自体は、心がどのように組み立てられ、体験をどのように処理するかに影響される一方で、悪夢による苦痛は、脅威的な経験に対する反応の強さや感情の調整力に関連しているということです。
この研究には限界もあります。
参加者は若い大学生に限定されており、自己報告に基づくため、他の年齢層やバックグラウンドを持つ人々に当てはまるかどうかはまだわかりません。
将来的には、より多様な集団を対象にし、感覚過敏やトラウマ歴なども考慮に入れた研究が必要です。
今回の研究から、悪夢の原因と影響についての理解が深まりました。
悪夢に悩まされる人は、心の構造や感情の調整力に注目することで、その苦痛を軽減する手助けになるかもしれません。
次回、夜中に飛び起きることがあっても、自分の心の奥深くに潜む秘密が少し明らかになったと考えると、少しは気が楽になるかもしれませんね。
そんな冷静さを保てるのならば、そもそも悪夢などへっちゃらな気もします。
元論文:
Kelly, W. E., & Mathe, J. R. (2024). Revisiting trait and state predictors of nightmare frequency and nightmare distress. Dreaming. Advance online publication. https://doi.org/10.1037/drm0000266
