Google Trendsによる麻疹流行の監視

 

はしかは世界中の子供たちにとって依然として大きな脅威であり、有効なワクチンが存在するにも関わらず、感染は絶えません。

特にCOVID-19パンデミックによる予防接種活動の延期は、はしかの予防における大きな後退を意味しました。

このような状況の中で、Google Trendsを用いたリアルタイム監視が、どのようにして感染症のアウトブレイクに対応できるかの評価が、新たな研究で示されています。

Google Trendsとは、Google検索でのキーワードの人気を時系列で表示する無料のツールのことです。

検索トレンドを地域別、時間別に分析でき、様々な分野でのデータ分析に利用されます。

研究では、はしかに対して、Google Trendsが公衆衛生の介入ツールとしてどれほど有効かが探求されました。

はしかは高い感染力を持ち、特に低所得国では致命的な結果を招くことがあります。

しかし、この研究では、高所得国の地域レベルでの監視に特に焦点を当て、Google Trendsのデータが実際の臨床ケースデータとどれほど相関しているかが調査されました。

例えば、沖縄県での分析では、Google Trendsと臨床データとの間に非常に高い相関が認められました。

ピアソンの相関係数は0.86という数値を示し、これは地域レベルでの監視が、国レベルでのそれよりも精度が高いことを示唆しています。

これは、地域ごとの特性や検索行動が国全体の傾向とは異なる場合があるためです。

ところで、なぜGoogle Trendsが感染症の監視に有効なのでしょう。

それは、以下の点に基づいています。

1. リアルタイムデータの提供:

   Google Trendsは、人々がGoogleでどのような検索をしているかのデータをほぼリアルタイムで提供します。特定の症状や感染症に関する一般の関心が突然増加した場合、それを迅速に検出して、潜在的なアウトブレイクの初期段階で警告することが可能となります。

2. 広範囲の地理的カバレッジ

   Googleの検索エンジンは世界中で広く使用されており、多くの地域でのデータアクセスを提供します。地域的に限定された感染症の監視だけでなく、広い範囲での傾向を把握することができます。

3. 予測モデリングへの応用:

   過去のデータと組み合わせることで、Google Trendsの情報を使って感染症の流行パターンをモデル化し、将来のアウトブレイクを予測することが可能です。このモデルは公衆衛生の計画やリソースの配分に役立ちます。

4. 低コストでの実施:

   従来の感染症監視システムは設置と維持に費用がかかることが多いですが、Google Trendsは無料でアクセス可能であり、追加の財政負担を伴わずにデータを収集・分析することができます。

5. 補完的なツールとしての機能:

   Google Trendsは、既存の監視システムと組み合わせて使用することで、その有効性を高めることができます。例えば、臨床データが入手しにくい地域や、他の監視手法に時間がかかる場合に、迅速な情報提供源として機能します。

 

しかし、この手法には限界も存在します。

例えば、低中所得国ではインターネットの普及率が低いため、Google Trendsを用いた監視の効果が限定的であると考えられます。

また、研究では単一キーワードの使用が警告のトリガーとなる偽陽性のリスクを高める可能性があることも指摘されています。

それでも、Google Trendsは感染症のアウトブレイクに対する迅速な対応を可能にするツールとして、大きな潜在力を秘めています。

特に新しい監視システムがまだ確立されていない国や地域での公衆衛生の監視に役立つことが期待されています。

このツールを活用することで、小規模なアウトブレイクでも迅速に対応し、より大きな流行の防止につなげることができるかも知れません。

今後の公衆衛生介入においては、Google Trendsのようなデジタルツールを積極的に活用し、伝統的な監視手法と組み合わせることが重要となってくるはずです。

 

元論文:

Wang, D., Lang, J.C. & Chen, YH. Assessment of using Google Trends for real-time monitoring of infectious disease outbreaks: a measles case study. Sci Rep 14, 9470 (2024). https://doi.org/10.1038/s41598-024-60120-8