最近、医療の世界でも人工知能(AI)の活用が急速に進んでいます。
診断から治療計画の立案、さらには事務的な処理まで、その用途は実に多彩です。
そこで医師が、例えば「当院ではAI(人工知能)を導入しています」と宣言したとします。
それも、ただの事務作業ではなく、あなたの診断や治療方針を決めるために使うとしました。
その時、一般の人々が抱く印象はどうなのでしょうか。
評価はあがるのか、さがるのか。その研究結果が明らかになりました。
アメリカの成人1276人を対象に行われたオンライン調査では、架空の医師の広告を4つのグループに分けて提示しました。
それぞれのグループには、AIを使う場面として「診断」「治療」「事務作業」、またはAIについて言及しないという違いを設けました。
その後、医師の能力、信頼性、共感性、診療予約をしたいかどうかを5段階で評価してもらったのです。
結果は少々皮肉なものでした。
AIを使う医師に対しては、どの用途であれ、AIに言及しない場合よりも評価が下がってしまいました。
具体的な数字を見てみると、能力の評価はAI未使用が3.85点だったのに対し、診断目的でのAI使用は3.66点、治療目的では3.58点でした。
信頼性や共感性についても同様で、AI利用が明示された医師ほど評価が低下しています。
さらに、実際に診療を受けたいという意欲も、AIが使用されると示された場合は有意に低下しました。
この調査結果を受けて浮かび上がったのは、患者や一般の人々がAIを使う医師に抱く漠然とした不安や抵抗感です。
その背景には、AIへの過度な依存や、医師と患者のコミュニケーションが減るのではないかという懸念があるようです。
また個人情報の取り扱いや医療費の増加についての心配も見え隠れしています。
もちろんこれは、架空の広告に対する印象評価です。
実際の医療現場で、AIの有用性を丁寧に説明されれば、印象は大きく変わるでしょう。
とはいえ、最新技術の導入が、必ずしも人の心を掴むとは限らない。
そんな人間心理の機微を、この研究は描き出しているようです。
結局のところ私たちは、最新鋭の機械よりも、白衣を着た人間そのものに、診てもらいたいのでしょうね。
参考文献:
Reis M, Reis F, Kunde W. Public Perception of Physicians Who Use Artificial Intelligence. JAMA Netw Open. 2025 Jul 1;8(7):e2521643. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2025.21643. PMID: 40674054; PMCID: PMC12272287.

紹介した論文の音声概要を、NotebookLMでポッドキャスト化してみました。あわせてお楽しみください。
