猫の尿臭が教えてくれること—腎臓の健康とフェリニンの秘密

猫の尿臭が教えてくれること—腎臓の健康とフェリニンの秘密

 

猫を飼っている方なら一度はあの独特な尿の臭いを経験したことがあるでしょう。

その原因は「フェリニン」と呼ばれる物質にあります。

フェリニンは猫の尿に含まれるアミノ酸の一種で、分解されることで硫黄を含む揮発性化合物を生成し、独特の臭いを発します。

しかし、腎臓の健康状態がこのフェリニンの量や臭いに影響を与えることが最近の研究で明らかになりました。

 

腎臓とフェリニンの関係

腎臓は、体内の老廃物をろ過し尿として排出する重要な臓器です。

しかし、腎疾患が進行するとこの機能が低下し、尿中のフェリニン量が減少することが確認されています。

この変化は、腎疾患が進行するサインである可能性があります。

 

研究の方法

対象猫:

  – 健康な猫34匹と腎疾患を持つ猫66匹を対象に分析。

  – 腎疾患を軽度(42匹)、中等度(13匹)、重度(11匹)に分類。

測定方法:

  – 液体クロマトグラフィー/質量分析法(LC-MS)で尿中フェリニンとその前駆物質(MBG、MBCG)の濃度を測定。

  – ガスクロマトグラフィー/質量分析法(GC-MS)で揮発性物質を測定。

 

研究結果

フェリニン濃度の変化:

  – 健康な猫と軽度の腎疾患の猫では、尿中フェリニン量に大きな違いは見られませんでした。

  – 中等度および重度の腎疾患ではフェリニン濃度が大幅に低下。

MBGの増加:

  – 腎疾患が進行すると尿中MBG(フェリニン前駆物質)の濃度が増加。

揮発性物質の減少:

  – フェリニン由来の揮発性物質(例: 3-メチル-3-メチルチオ-1-ブタノール)の濃度が低下。

  – フェリニン濃度と揮発性物質量には強い正の相関が確認されました。

 

フェリニンが減少する理由

腎疾患により腎臓の酵素活性が低下すると、フェリニンの生成や代謝が阻害されます。

その結果、尿中のフェリニン濃度や揮発性化合物が減少し、尿臭が弱くなるのです。

これは単なる尿の希釈ではなく、代謝の変化によるものです。

 

実用的な意義

フェリニンの測定は、腎疾患の診断や進行度の評価に有望な手段となる可能性があります。

将来的には、簡単に尿を検査できる家庭用キットが開発されるかもしれません。

 

結論

– 猫の尿臭の変化は腎疾患のサインとなり得る。

– 尿臭がいつもと異なると感じたら、早めに動物病院で健康診断を受けることが大切。

– 定期的な健康チェックと注意深い観察が、猫の健康維持に役立ちます。

 

猫の健康を守るためには、飼い主が小さな変化にも気づくことが重要です。

尿臭の変化が気になった場合は、早めの対処を心がけましょう。

 

参考文献:

Ayaka SUKA, Reiko UENOYAMA, Shota ICHIZAWA, Masaaki KATAYAMA, Masao MIYAZAKI, Tamako MIYAZAKI, Reduction of urinary felinine in domestic cats with renal diseases leads to decreased catty odor, Journal of Veterinary Medical Science, Article ID 24-0370, Advance online publication December 03, 2024, Online ISSN 1347-7439, Print ISSN 0916-7250, https://doi.org/10.1292/jvms.24-0370, https://www.jstage.jst.go.jp/article/jvms/advpub/0/advpub_24-0370/_article/-char/en