それが「普通」なのは誰のせい?

それが「普通」なのは誰のせい?

 

「普通」とは何でしょうか?

今日は、私の面倒くさい思考におつきあいください。

 

簡単に言えば、「普通」を形づくっているのは、「社会的な規範」と呼ばれるものです。

規範とは、社会や文化が導く、行動のガイドラインとも言えます。

例えば、「電車で席を譲るべきかどうか」「挨拶をすべきか」など、こうしたルールは私たちが暮らす場所と文化、時代に基づいて形成されているものです。

 

規範には2つの強力な力があります。

一つは、規範に従うと感じる「誇り」や「承認」の感情です。

それによって、正しいと思われる行動は促進されます。

逆に、規範を破った際に感じる「罪悪感」や「恥」の感情は、私たちにブレーキをかけます。

心理学者の研究では、社会的な規範に従った時、脳内の報酬系が活性化することが示されていて、これが行動を維持する一因となっています。

 

しかし、この「社会的な普通」が揺れ動いているのが、今の世の中です。

急速な社会変化の中で、かつて有効だった規範が今も意味を持つのか、誰かがSNSで疑問の声をあげると、一斉に賛同のコメントが並び、おおいに盛り上がります。

けれども、そんな時は、ちょっと冷静になって、この言葉を思い出した方がよさそうです。

 

「フェンスが建てられた理由がわかるまで、決してフェンスを撤去してはならない」

 

イギリスの推理作家クラブの初代会長を務めた、G.K.チェスタートンの「フェンスのたとえ」といわれるものです。

社会的規範についても、まずはその起源や目的を考えるべきだという教訓です。

 

例えば、「男性が女性にドアを開けるべきか」という疑問が生まれた時、その行動の背後にある意図を考える必要があります。

かつては女性を守るための行為だったかもしれません。

しかし、現代の価値観に照らし合わせて、その規範が今も有効なのかどうかを見直してみることが必要になります。

 

さらに、現代社会では「誰のアドバイスに従うべきか」という課題もあります。

かつては家族や教師、政治家などがその役割を果たしていました。

今はインターネットの普及で、インフルエンサーや自称専門家が数多く登場しています。

フィットネスや美容の「専門家」がSNSで人気を博していますが、彼らの言うことがすべての人に適用できるとは限りません。

2019年の調査では、SNS上で影響力のある「専門家」の40%が正式な資格を持たずにアドバイスを行っているという結果もあるのだそうです。

 

結局のところ、規範とはその時代やコミュニティ、個人の状況に応じて適切に変わっていきます。

ネットで大きな影響力を持つアドバイスでも、もちろん全ての人に適しているわけではありません。

ますます「普通」が混沌としている、難しい世の中になってきました。