高齢者の透析療法についての調査研究

高齢者の透析療法についての調査研究

 

透析を始めるべきか、それとも内科的な治療でしのぐべきか?

高齢者の腎不全患者にとって、これは非常に大きな決断となります。

最近の研究で、この選択が生存期間や自宅で過ごせる時間にどのような影響を与えるかが調査されました。

この研究に参加したのは、推定糸球体濾過量(eGFR)が12 mL/min/1.73 m²未満の高齢者、つまり非常に重度の腎機能障害を抱えた方々です。

eGFRがこの値に達するということは、腎臓の機能が正常の10%未満まで低下している状態で、末期腎不全に相当します。

さらに、対象者の平均年齢は約78歳であり、彼らは腎機能障害に加えて、心不全や糖尿病、慢性肺疾患、認知症などの複数の併存疾患を抱えていました。

また、約30%の患者が入院歴を持ち、栄養状態も悪化していることが多く、全身の健康状態は非常に脆弱でした。

 

研究によれば、透析を始めることで生存期間がわずかに延びる可能性がある一方で、自宅で過ごせる時間は減少することが分かりました。

具体的には、透析を開始した患者の3年間の平均生存日数は770日でしたが、医療管理を継続した患者は761日とほぼ同じ。

つまり、透析によって得られる延命効果はわずか9日程度という結果です。

 

さらに、透析を始めることで自宅で過ごせる日数が減少することも明らかになりました。

透析を始めた人は、そうでない人に比べて約14日少ない在宅日数となり、その分、病院や施設での時間が増える可能性があります。

 

特に年齢による違いが明らかでした。

80歳以上の患者では、透析によって生存期間が約60日延びる一方で、自宅で過ごす時間は約13日短くなる傾向が見られました。

しかし、65歳から79歳の患者では、透析を始めた場合でも生存期間が延びることはなく、むしろ在宅時間が減少することが多かったのです。

 

この研究は、高齢者が透析を選択する際に、単に寿命を延ばすだけでなく、どれだけ自宅で過ごせるかという生活の質を考慮する必要があることを示しています。

透析を始めることで得られる恩恵は限られており、特に高齢者の場合は、延命よりも生活の質を重視した選択が求められるかもしれません。

医療の進歩により、選択肢が増えた現代では、自分にとって何が最も大切かを考えることが重要となります。

 

参考文献:

Montez-Rath ME, Thomas IC, Charu V, et al. Effect of Starting Dialysis Versus Continuing Medical Management on Survival and Home Time in Older Adults With Kidney Failure : A Target Trial Emulation Study. Ann Intern Med. Published online August 20, 2024. doi:10.7326/M23-3028