医療の進歩をめざして、私たちは病気に対するさまざまな治療法を模索し続けています。
特に、慢性腎臓病(CKD)、2型糖尿病、高血圧という3つの病気を同時に抱えている人は、健康状態が不安定になりがちで、入院のリスクも高まります。
この問題の解決のヒントを探ろうと、アメリカで大規模な研究が行われました。
141のプライマリケア診療所を対象に、11,182人の患者を2つのグループに分けて、効果的な治療法がどちらなのかを比較しました。
一方のグループは「診療支援群」と呼ばれ、最新の情報技術を駆使したサポートを受けました。(5,690人)
具体的には、電子カルテを使ってリアルタイムに患者の情報を把握し、看護師や薬剤師が最適な治療法をアドバイスする仕組みです。
最適な治療法とは、エビデンスに基づいた薬物療法や生活習慣の指導、心血管合併症の予防策を含みます。
もう一方のグループは、通常のケアを受ける「通常ケア群」です。(5,492人)
エビデンスに基づいた薬物療法とは、以下のようなものです。
– ACE阻害薬やARB(アンジオテンシン受容体拮抗薬):これらは腎臓の機能を保護するのに役立つ降圧薬です。
– スタチン:高コレステロールを治療し、心血管疾患のリスクを低減します。
– SGLT2阻害薬:糖尿病の治療に使われ、腎臓の保護効果もあります。
– GLP-1受容体作動薬:血糖値をコントロールし、心血管の健康を改善します。
– ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬:特に慢性腎臓病の患者において心血管イベントのリスクを減少させる効果があります。
1年間の追跡調査の結果は以下の通りです。
– 診療支援群の入院率は20.7%、通常ケア群は21.1%で、有意な差は見られませんでした。
– 診療支援群の死亡率は2.3%、通常ケア群は2.7%で、こちらも有意な差は見られませんでした。
– 急性腎障害の発生率については、診療支援群が12.7%、通常ケア群が11.3%であり、診療支援群の方が高い結果となりました。
この研究からわかることは、エビデンスに基づいたアプローチが必ずしも全ての患者に適用できるわけではないという現実を示しています。
診療支援群の方が急性腎障害の発生率が高かったという結果は、処方された薬物療法の副作用が悪影響を与えた可能性があります。
この研究は、診療支援の課題を浮き彫りにしていますし、個々の患者の状況に合わせた慎重な治療が必要だということですね。
新しいことを始めようとすると、必ず医療の原点に回帰することを求められてしまいます。
当然と言えば当然のことですし、あくまでも人を扱うのが医療だということですね。
参考文献:
Vazquez MA, Oliver G, Amarasingham R, et al. Pragmatic Trial of Hospitalization Rate in Chronic Kidney Disease. N Engl J Med. 2024;390(13):1196-1206. doi:10.1056/NEJMoa2311708

