炎症をコントロールする脳と体の連携

 

言わずもがな、私たちの体は驚くほど複雑で高度なシステムで構成されています。

そのシステムは、人類が誕生して以来、そこにあり続けてきたものです。

そして、この高度なシステムを丁寧に解きほぐしてきたことが、医学の歩んできた道と言えます。

このコロナ禍で、新しいワクチンが登場してから、私たちは日常的に「免疫」について耳にするようになりました。

「はたらく細胞」などのマンガも、免疫についての理解を深めるのに貢献していますね。

特に興味深いのは、脳と体がどのように連携して免疫応答を調節しているかです。

最新の研究では、神経免疫回路が炎症の制御において重要な役割を果たすことが明らかになりました。

つまり、脳と体をつなぐ回路が果たす役割です。

研究によると、体が感染や炎症を感知すると、神経免疫回路が活性化します。

これにより、脳は体の状態を把握し、適切な免疫応答を開始します。

具体的には、体内で炎症が始まると、炎症促進性と抗炎症性のサイトカインという物質が産生されます。

これらのサイトカインは、迷走神経という神経を通じて脳に信号を送ります。脳はこれらの信号を受け取り、免疫応答を調節します。

研究チームは、TRPA1という特定の神経がこのプロセスに深く関与していることを発見しました。

TRPA1神経は抗炎症性のサイトカインであるIL-10に反応し、炎症を抑制する役割を果たします。

この神経を活性化することで、抗炎症応答が強化され、過剰な炎症が抑えられることが示されました。

また、研究ではDREADDという化学遺伝学的ツールを用いて、TRPA1神経を人工的に活性化する実験も行われました。

その結果、IL-10のレベルが増加し、炎症促進性のサイトカインであるIL-6やIL-1βのレベルが減少することが確認されました。

つまり、これを使って体の炎症反応を適切に制御することができたのです。

さらに、この研究では実際に動物を使って、炎症反応の制御を試みました。

通常、過剰な炎症は動物にとって致命的ですが、TRPA1神経または中枢神経系の特定のニューロンを活性化することで、これらの動物が過剰な炎症から保護されることができたのです。

つまり、サイトカインストームと呼ばれる体の過剰な炎症反応に対する新しい治療法の一つとして、この神経免疫回路の活性化が有望である可能性が示されました。

この研究は、体と脳がどのように協力して免疫応答を調節するかを理解する上で重要な一歩となりました。

私たちの体がどれほど巧妙に設計されているかを再認識し、今後の医学の進歩に期待が持てる内容だと思います。

 

参考文献:

Jin, H., Li, M., Jeong, E. et al. A body–brain circuit that regulates body inflammatory responses. Nature 630, 695–703 (2024). https://doi.org/10.1038/s41586-024-07469-y