オランウータンが自分の傷を自分で治療する

 

とても興味深いお話です。

オスのスマトラオランウータン「ラクス」は、自分の顔についた傷を治療するために、植物を利用しました。

つまり、植物のもつ薬効作用を利用したのですね。

ラクスは、フィブラウレア・ティンクトリア(Fibraurea tinctoria)という植物の葉を噛み、その後、それを顔の傷に塗りつけていました。

この行動は2022年に観察され、彼がこの植物を用いたのはこれが初めてではありませんが、科学的に記録されたのはこれが初めてでした。

フィブラウレア・ティンクトリアは、東南アジア全域に分布しており、その抗菌、抗炎症、抗酸化作用が知られています。

また、この植物には疼痛を軽減する効果もあり、傷の治癒を促進する可能性があります。

ラクスがこの植物を選んだのは、これらの効果を直感的に理解していたからかもしれません。

実際、この行動は、痛みを和らげ、傷口の感染を防ぐための自己治療行動として解釈されています。

 

 

この写真は、スマトラオランウータンの「ラクス」が自己治療を行っている過程を示したものです。

顔の傷を治療するために、ラクスはフィブラウレア・ティンクトリアの葉を噛んでから、その葉を患部に塗りつけています。

各写真の時系列は、2022年6月22日から8月25日までです。:

1. 6月22日: 傷が明らかに見えます。ラクスはこの時点でまだ治療を始めていないようです。

2. 6月23日: 顔の傷がはっきり見える状態が続いています。

3. 6月24日: 治療前の傷が見える写真です。

4. 6月25日: ラクスがフィブラウレア・ティンクトリアの葉を噛み、顔の傷に塗りつけ始めています。

5. 6月26日: 彼は引き続き植物の葉を咀嚼して塗り、自己治療を行っています。

6. 6月30日: 治療を続けた後、傷が明らかに改善していることが見て取れます。

7. 7月5日: 傷の治癒がさらに進行し、ほとんど見えなくなっています。

8. 7月19日: 顔の傷はほとんど見えません。ラクスの傷が十分に回復していることが示されています。

9. 8月25日: 顔の傷は完全に治っており、痕跡はほとんど見えなくなっています。

 

他の霊長類でも似たような自己薬用行動が観察されていますが、これらの行動がどのようにして学習され、伝承されるのかはまだ完全には解明されていません。

オランウータンの場合、特定の行動が社会的学習によってどのように習得されるかについての研究も進んでおり、この種の治療行動も観察から学んだ可能性があります。

この研究は、自然界の中で他の動物がどのようにして病気や傷を治療するか、そしてその知識がどのようにして次世代に伝えられるかをフォーカスしています。

これは、人間の医学だけでなく、野生動物の行動研究にとっても重要な発見です。

自己治療の行動は、種の生存において重要な役割を果たす可能性があり、進化的にどのように発展してきたのかを考える上で興味深いトピックです。

私たち人間だけでなく他の生物もまた、生存と健康を維持するために独自の方法を見出しているのですね。

 

元論文:

Laumer, I.B., Rahman, A., Rahmaeti, T. et al. Active self-treatment of a facial wound with a biologically active plant by a male Sumatran orangutan. Sci Rep 14, 8932 (2024). https://doi.org/10.1038/s41598-024-58988-7