慢性腎臓病(CKD)を抱える方は腎臓機能の低下によって尿酸を十分に排泄できず、高尿酸血症を生じやすいといわれています。米国NHANESの調査によると、痛風と診断された人のうち約3分の2がCKDステージ2以上であり、5人に1人はCKDステージ4に達していたという報告があります。尿酸値が長期間高いままでいると、結晶が蓄積して痛風を引き起こす可能性があるため、血中の尿酸濃度を適切な水準(一般的には6 mg/dL未満)に保つことが大切だとされています。
尿酸生成を抑える代表的な薬には、キサンチンオキシダーゼ(XO)阻害薬のアロプリノールとフェブキソスタットがあります。痛風治療の目標値は6 mg/dL未満、重症の痛風や結節がある場合は5 mg/dL未満を推奨するガイドラインもあります。今回、CKDを合併する痛風患者への投与方法を現実的なかたちで検証したSTOP Gout試験が報告されました。この試験では、治療目標に沿って用量を段階的に調整する「Treat-to-Target」方式を72週間にわたって実施し、アロプリノール群とフェブキソスタット群の効果と安全性を比較しています。
この研究にはCKDステージ3の患者が含まれ、腎機能の変動を考慮しながら用量を調整したことが特徴です。その結果、尿酸値を目標に近づけるためには、アロプリノールで平均395 mg/日、フェブキソスタットで64 mg/日という、一般集団とほぼ同等の用量が用いられました。また、平均推定糸球体ろ過量(eGFR)の変化率はアロプリノール群で年あたり1.2 mL/min/1.73 m^2、フェブキソスタット群で0.8 mL/min/1.73 m^2と大きな差は認められず(P=0.73)、腎機能の維持については両薬とも同等の安全性が示唆されました。痛風発作の頻度に関しては、アロプリノールでやや少なかったものの、脱落者数などを考慮すると統計的に明確な差とは言い切れないという補足もありました。
他の大規模試験であるPERLやCKD-FIXでは、高尿酸血症を治療してもCKD進行を抑える効果ははっきり示されなかった一方、アロプリノールの開始が腎機能悪化を遅らせるとする観察研究も存在します。さらにCARES試験では、フェブキソスタットの心血管リスク増大が注目されましたが、STOP GoutやFAST試験では大きなリスク差が見られなかったとの報告があります。腎機能が低下した患者では、慎重な用量調整と有害事象のモニタリングが欠かせませんが、こうした試験デザインの違いにより見解が分かれる点はまだ多いようです。
結局のところ、CKD患者の高尿酸血症を治療する一番の目的は、痛風発作を減らして生活の質を高めることだと考えられます。腎機能の更なる悪化を防ぐ効果は明確とはいえませんが、発作に伴う強い痛みや医療費の増大を避けるためにも、適切な治療戦略が求められます。今回のSTOP Gout試験が示すように、CKDステージ3の段階では一般的な用量が使える可能性があることや、安全性が大きく損なわれないことは多くの臨床現場にとって朗報でしょう。重症のCKD患者を対象とした研究はまだ不足しているので、今後はより幅広いステージのCKDにおける適切な治療目標や投薬量を検証する試験が期待されています。より安全で有効なアプローチを選ぶための情報が増えれば、痛みの少ない毎日と腎臓への負担軽減を両立できる治療がさらに進むかもしれません。
参考文献:
Helget LN, Davis-Karim A, O’Dell JR, et al. Efficacy and Safety of Allopurinol and Febuxostat in Patients With Gout and CKD: Subgroup Analysis of the STOP Gout Trial. Am J Kidney Dis. 2024;84(5):538-545. doi:10.1053/j.ajkd.2024.04.017
