OISTの新発見:アルツハイマー病を改善するペプチドの可能性

OISTの新発見:アルツハイマー病を改善するペプチドの可能性

 

沖縄の人間にとって、OISTのニュースはどうしても目についてしまいます。

私の位置情報などもおススメのニュースの条件に含まれているでしょうから、目につくのは当然と言えば当然なのでしょうが、正直、だいぶ私の方から寄っている感じはあります。

7月19日付で、こんな見出しのオンライン・ニュースがあがっていました。

「アルツハイマー病の進行防ぐアミノ酸化合物…沖縄科学技術大学院大学、マウス実験で成功」

さっそく、元の論文の方を検索してみました。

OISTの研究者らが扱ったのは、PHDP5というアミノ酸化合物=ペプチドでした。

このペプチドは、アルツハイマー病のモデルマウスで空間学習と記憶の障害を改善する効果が確認されたのだそうです。

アルツハイマー病は、脳内で異常なタンパク質が蓄積し、神経細胞が正常に機能しなくなることで進行します。

この異常なタンパク質の一つが「タウ」です。

タウタンパク質は、通常、神経細胞内の微小管という構造を安定させる役割を果たしています。

しかし、アルツハイマー病では、このタウが異常に蓄積し、微小管と結合する能力を失います。

その結果、神経細胞内の物質輸送が妨げられ、シナプス機能が低下してしまいます。

PHDP5は、このタウタンパク質が引き起こす問題を解決するために開発されました。

PHDP5は、タウが微小管と結合するのを阻止し、正常なシナプス機能を回復させることができます。

研究では、PHDP5を鼻腔内からマウスに投与することで、脳内に効率的に到達させることができました。

鼻腔内投与は、薬剤が直接脳に到達するのに役立ち、副作用を最小限に抑える方法です。

実験では、PHDP5を投与されたアルツハイマー病モデルマウスが、マウリス水迷路テストで顕著な改善を示しました。

このテストは、マウスが水中のプラットフォームを見つける能力を測定するもので、空間記憶と学習能力を評価します。

PHDP5を投与されたマウスは、タウが蓄積しているにもかかわらず、正常なマウスと同じくらいの速さでプラットフォームを見つけることができました。

さらに、PHDP5は他の神経変性疾患にも効果を示す可能性があります。

例えば、パーキンソン病のモデルマウスでも、シナプス機能の改善が期待されています。

このように、PHDP5は多くの神経変性疾患の治療に応用できる可能性があり、今後の研究が期待されます。

PHDP5は、神経細胞の機能を回復させることで、アルツハイマー病の症状を緩和する新しい治療法としての可能性を秘めています。

これからの研究でさらに詳細が明らかになれば、私たちの健康を守るための強力な武器となるでしょう。

 

参考論文:

Chang CJ, Taoufiq Z, Yamada H, Takei K, Tomiyama T, Umeda T, Hori T, Takahashi T. The microtubule-dynamin binding inhibitor peptide PHDP5 rescues spatial learning and memory deficits in Alzheimer’s disease model mice. Brain Res. 2024;1838:148987. doi:10.1016/j.brainres.2024.148987.